暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜3
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見りゃオマエだってそんな事言えなくなるぞ!』
「そんなことないもん!」
「えっと、あの、その……」
 ユーノを挟んでリブロムと言いあう。その日の夜――私にとっての始まりの夜は、そんな風にして過ぎていった。




「やはり逃げたか……。脅しすぎたか?」
 朝日を睨み、舌打ちする。一応夜明けまで待ってみたが、結局あの魔導師――ユーノとやらは、戻ってこなかった。ウチが見つからないだけというオチもないとは言い切れないが……さすがにそこまで間抜けではないだろう。とはいえ、見つかったからどうなるというものでもあるまい。恭也や士朗、美由紀が侵入者に気付かないとは思えないし、よしんば外見に騙されたとしても、リブロムまで誤魔化される訳がない。辿り着いたとしてもなのはに接触する前に発見されて終わりだろう。もっとも、だからと言って恭也たちがアイツをどうこうした……具体的に二度と戻ってこれないような状態にしたとも思えない。となれば……。
(となると、俺を恐れて逃げたってところかな)
 それならそれで構わない。むしろ、好都合だ。俺を恐れて逃げたと言うのなら、俺の逆鱗に触れるような真似もしないだろう。例えば、なのは達を巻き込む、と言ったような。
(まぁ、恭也たちに見つかって今も追い回されてるって可能性もあるか)
 さすがに命までは取らないだろうが――まぁ、多少痛い目と怖い目には合わされているかもしれない。それに関しては自業自得だ。危険を承知で巻き込もうとする方が悪い。
「まぁ、しばらくはリブロムに任せるか」
 相棒がいれば――相棒の手助けがあれば大抵の脅威は弾き返すだろう。何せ、あの家には恭也と士郎と美由紀がいるのだから。
(しかし、どうしたものか……)
 とはいえ、いつまでも預けておく訳にもいかない。大切な相棒であり――俺の目的を達成するために必要なものは全てあの中にある。必ず取り戻す必要があった。
(だが、あの魔導師がいる限り残しておくべきか)
 取り戻すだけならすぐにできる。今慌てて回収する必要もない。どの道、あの魔導師を追い払うまではあの家に置いておく必要はあるのだから。
 それに、あるいはこの一件が終われば――…。
「未練、かな」
 異界の魔法使いに目をつけられた以上、戻る訳にはいかない。もしも戻れば、『彼女』の二の舞になりかねないのだから。それを理解した上で、呻く。
 あの場所は、居心地が良かった。それは認める。もし仮に、引き留められでもしたら振り払う事は出来ないだろう。そんな事を思う。思ってしまう程度には、自分は孤独でいたらしい。そして、それを凌ぐ術をまだ取り戻してはいなかった。
「寝坊して、遅刻しなければいいが……」
 そんな事を呟いてから、朝日に背を向けて歩き出す。例え、リブロムが手元になくとも、できる事はある。

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