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その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜3
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 甘い香りを――女の匂いを感じる。視線の先には、あの女がいた。まるで誘うかのように、『裸のまま』街中を歩いている。ちょうどいい。手間が省けた。笑みを浮かべ、羽交締めにする。
「やめろ!」
 あの女の裸体に手を這わせる。あの化け物はいない。それなら問題ない。このまま、二度と逆らえないようにしてやる。力づくで『ベッド』に押し倒そうとして――
「いい加減にせんかああああっ!」
 妙に野太い声と共に、身体が浮く。気付けば地面に叩きつけられていた。
 ……――
「まぁ、こんなものか」
 近くのビルの屋上から、街一番のいかつい警官に抱きつき、押し倒そうとしたゴロツキに華麗な一本背負いが決まるのを見届けてから俺は肩をすくめた。これで少しは大人しくなってくれればいいのだが。しかし、それにしても……。
「いつ見ても見事な効果だな。やっぱり女は魔物ってことか」
 訳が分からない。そんな顔で、勝ち目のない乱闘を開始したゴロツキを見やり、呻く。
 行使したのは、誘惑魔法。その中でも、いわゆる性欲に作用する魔法だ。元々は魔物……元人間の魔物に対して用いる魔法である。いや、確かにそのはずなのだが……。
(むしろ、魔物の方が利きが悪いような……)
 というか、味方が魅了され、酷い目にあった事が何度かある。今となってはその印象の方が圧倒的に強かった。
「まぁ、いいか。これでこの街も少しは平和になるだろう」
 誰かが通報したのか、応援まで駆けつけてくる。複数人の警官に担ぎあげられ連行されていくゴロツキを見届けてから、俺はその場所を後にした。




 どうやら、出遅れてしまったらしい。
 何度か光と来た事のある神社の境内で、私はがっくりと肩を落とした。ジュエルシードの反応があったはずの場所は、前に来た時と同じように静寂に包まれていた。もちろん、昨夜のような怪物も、ジュエルシードも、光の姿も無い。
「せっかくここまで走ってきたのに……」
 石段まで走って上がったせいか、足にうまく力が入らない。そのうえ空振りとなれば、なおさらだった。このまま座り込んでしまおうか。そんな誘惑を覚えた。
『まぁ、想像通りのオチだな。そもそもお前の足で間に合う訳ねえよな。ヒャハハハハ!』
 鞄の中からげらげらと笑う声がする。リブロムだった。光の『相棒』だというこの本は、何故か私にはとても意地悪だった。中身も読ませてくれない。
「ま、まぁまぁ。あの人……光さんがここに来たのは間違いないんだから、ひょっとしたらまだ近くにいるかも」
 励ますように言って――途端、自分の言葉にゾッとした様子で周囲を見回すのは、一匹のフェレット……ユーノだった。色々とあって、彼は光を怖がっているのだ。
「そうかな?」
 息を整えてから、身体を起こす。
「それなら、もう少し探して
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