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その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜3
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 ひょっとして、彼らは子守役が欲しかったのだろうか。
 何の因果か知らないが相棒――御神美沙斗の兄とその妻に引き取られ、彼らの家に連れて帰られてから数日が経ち……ひとまず、自分が置かれた環境を俯瞰できるようになってから、真っ先に思ったのはそんな事だった。
 彼ら夫婦の間には、三人の子どもがいた。家族関係は円満なようで、入院する父親の元に足繁く通っている。また、父親に代わり家計を支える母親もよく手伝っているようだ。誰もが理想とする家族像を体現していると言っていいだろう。だが……それでも、客観的に見れば特殊な家庭だと言わざるを得まい。
 長男――恭也という少年は、士郎の連れ子らしい。母親が誰なのかをあえて聞き出そうとは思わないが……それだけなら、そこまで珍しくはない。
 長女――美由紀という少女は、何と相棒の実の娘だという。なるほど、時折親子に羨望の眼差しを送っていたのは彼女が理由だったらしい。まったく、困ったものだ。
 この時点で、彼の妻――桃子と直接血の繋がった子どもはいない。だが、彼女は随分と献身的に二人を育てたようで、彼らも桃子を実の母親だと慕っている。美由紀に至っては、最近は俺に見せつけるように露骨に桃子を母と呼んでいた。彼女にしてみれば美沙斗の『息子』と紹介された俺には色々と思う事があるのは想像に難くない。その態度は必然だと言っていいだろう。
 もっともこの二人は、今はさほど問題ではない。父親不在という事で、それぞれが忙しそうにしているし――この世界の社会通念からすればまだ成人では無いとはいえ、それに近い年齢に達している。家業に夫の看護にと桃子は朝も夜もなく働いているが……今さら子守が必要という事もあるまい。
 母親が母親としての役目に専念できない。そのしわ寄せは末の娘……皮肉にも唯一桃子とも血の繋がりがある娘だけに押し寄せていた。
 自分にそれを知らせたのは、かみ殺された嗚咽だった。聞いている者の胸まで痛む様なそれに導かれ、慣れない家を彷徨う。そして、
 行き着いた先にいたのがなのはだった。彼女は慌てた様子で涙を拭い、なんでもないよと笑って見せた。その姿に愕然としたのを今でも覚えている。
 情けない話だが――この時になって、初めて自分はそれに思い至った。考えてみれば当然の事だった。今は彼女の両親も、他の兄妹達も、自分の事で手一杯なのだ。だから、彼女は誰にも甘えられなかった。甘えなかった。こんな幼い子が……今がちょうど甘えたい盛りだろうに。
 こっちへおいで――そう呼びかけると、なのはは酷く驚いたようだった。そして、もう一度言った。
「私は大丈夫だから」
 ここまで分かりやすい嘘も珍しい。場違いにも、少しだけ笑みが零れた。いや、少しだけ肩の力が抜けた。あまりよく覚えていないが――それでも、彼らより随分と長く生きてい
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