第二話
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腕に強烈な痛み、正しくはそれをナーヴギアが変換した結果の不快感に、俺の意識は一気に覚醒した。
「おー、やった。戻ってきた」
「いってえ!戻った!戻ったから!俺の腕、爪まで使って抓るのやめて!」
半分涙目になりながら、俺は無慈悲な少女に大声で懇願した。少女は、そんな俺の反応をにやにやしながらひとしきり楽しむと、満足したのかようやく俺の腕から手を離した。
脇腹の件と言い、拷問の好きな女だ。
あの少女から庇うように腕を抱き、ご丁寧に赤くなった部分にフーフーと息を吹きかけながら、俺は、いまだ背後で笑う少女に全力で睨みを入れた。
「ふふ、やっと素が出た感じ?羞恥心は消えた?」
「痛みで吹き飛んだわ!」
「で、話の続きなんだけど――」
少しくらい心配してくれてもいいんじゃないかと叫ぶが、またしても無視される。さて今度はどんな突拍子もないことをやらかすのかと、呆れが混じった感情の中、数秒後、俺は想像通り、どこからどう見ても言うタイミングではないはずの一言を、少女の口から聞いた。
「あたしとフレンド登録しようよ」
「……そんなことのためにここまでやってくれたのか」
「そんなことっていうのはひどいな、あたしは……その……運命みたいなものを感じたよ。この人こそ最初のフレンドだって感じに」
だろうなと(主に運命という部分に対して)俺は肺に溜まった息を吐いた。その直後、メニューを開くときのSEとはまた違う電子音が頭に響いた。さらに一瞬遅れでどこからともなくウインドウらしきものが現れる。
人差し指と中指をふるあの動作はしていないはずだが、何かショートカットに繋がるような別のスイッチを踏んでしまったのだろうか。
瞬時にそう推測してみたが、するまでもなく、戦士に向かって私はまだ変身を三回残しているとでも言いそうな、余裕綽々といった少女の顔がショートカットの理由を告げた。
「……はい!フレンド申請送ったよ。ほら早く早く!OKをぽちっとぽちっと!」
なるほど。よくよく見れば『【SEILA】からフレンド申請されました』の一文が上部に浮かび、下部に『YES』と『NO』の選択肢が並んでいる。ウインドウをいじっている姿は見たことがないと思うが、確かにこの少女からの申請のようだ。
「てかほんと、いつの間に送ったんだよ……」
俺が少女から目を離したのはこの数分内で呆れのため息をついたあの一回だけだったし、しかも時間は五秒となかったはずだ。その一瞬でここまでの操作を完了させたというのなら、悔しいが素直に賞賛しなければならない。
「あたしの得意技なんだよ」とふんぞり返る少女に、「マジかよ!?」と驚愕と賞賛、そしてほんのわずかな憐みを送った俺は、人差し指をフレンド申請の『OK』へと運んだ
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