第二話
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
人間は左右を選択する場合、無意識に左を選んでしまうことが多いとどこかで聞いた覚えがあるが、神様はそれをよしとしなかったわけだ。
はたしてこの結果が吉(この迷宮から脱出し、のびのびゲームプレイ)と出るか凶(永久に迷宮に引きこもり(審議中とか言ったやつ屋上))と出るか。
なんてありきたりな台詞を思い浮かべながら、俺は神様の言うとおり、右に舵を切って一歩踏み出した。
その時、
「ひゃッ!」
突然、背後で聞き覚えのある女の子の声が聞こえたかと思ったら、
「ごはァ!」
何か金属の棒のようなものが脇腹にめり込む感覚と共に、俺は受け身もとれぬまま、顔面から勢いよく倒れこんだ。
「………」
痛い。主に心的な意味で。
脇腹という名の肺への一撃に加え、顔面スライディングという悲惨さだ。いくらここがゲームの中で痛みを感じず、かつ《圏内》ということもありヒットポイントも減らないとはいえ、いきなり突進というのは無いんじゃなかろうか。
ちゃんと前を見ろとでも言ってやりたいが、残念なことに先の一撃で言語機能が破損してしまっているようで、かすれ声さえ出ない。
それに加え、事件がおきてから数秒経過しているのにもかかわらず、突進してきたお相手もまったく反応をみせない。
「―――――」
何も進展がないまままた数秒経ったころ、静寂の中、悶絶して声が出ない俺の手のひらから1コル硬貨がこぼれ、からころと軽快な金属音を奏で始めた。
しばらく聞き惚れているうちにその音は静かに遠ざかってゆき、限りなく小さくなったところで役目を終えたとばかりに水音に姿を変え、消えた。
この近くの水場と言えば、やたらと汚い側溝だけだったように思うが――ともかく、それが何かしらのスイッチになったようで、色々な因果に絡まり停止していたこの場の時が、背後の悪寒と共にようやく動き出した。
「あ……ええと、ごめんね、急いでたもんだから……って、あれ?あんた、さっきの……?」
ああ、やっぱり、今日は神様のご機嫌がよくないらしい。
あの女の子だ。今俺が会いたくない人ランキング堂々の一位の、親切にメニューの開き方を指導したらカツアゲでもされているかのように大声で謝罪され、その上猛ダッシュで逃げられたという非常に不幸な過去を持つ、あの子だ。
よりにもよってなんでこの状況(まいご)でこの子なんだ。
まともに顔を見れる自信がない。だが、このまま寝そべっているわけにもいかず、俺は脇腹の鈍い痛みに耐えながら、なんとか体を起こした。背中は見せたままだが。
が、そんなささやかな抵抗も女の子が正面に回り込んできたことによりあっさりと砕かれ、結局のところ、その子と正面から向き合うという、俺が最もパニックを起こしやすい状況に陥ってし
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ