第二話
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ものは見当たらず、代わりに左下に300コルという文字が描かれているところを見るに、どうやら武器はこの全財産300コルで買えということらしい。確かに、数十もの武器種が存在するこの世界なら、初期武器として数種類を与えるよりも直接プレイヤーに選ばせるほうがいいのかもしれない。
「オッケ、まずは武器屋ってことか」
俺は大分疲労感の抜けた足腰を起こすと、先ほど快走した路地のほうを見つめた。どこかでちらりと武器屋の看板を見た気がしたからだ。
さすがにここから確認することはできないが、来た道を戻っていけばいずれ看板の下までたどり着くことができるだろう。他に当てもないことだし、まずはそこからだ。
俺はそんな淡い期待と一抹の不安を抱えながら、再び、複雑に絡み合う路地へと足を踏み入れた。
――で、
「……ここどこだよ」
見事に迷った。
やはりあれだ、たどり着くことができるだろうだとか、当てがないだとか、フラグめいた事を考えてしまったのが間違いだったんだ。ちくしょう!なんて単純なフラグ建築士なんだ俺は!
だが、そんな後悔ももう遅い。このゲームには、即効電源切って前のセーブデータからリスタートという、あの最後の一手は一切通用しないのだ。ゆえに今の俺には、二度とこんなことを繰り返さないよう、ちまちまとフラグブレイカーのスキルを磨くことしかできない。
というより、あのパニック状態で道順など覚えれるわけがなかったのだ。第一、あの時はほとんど景色なんて見ていなかったし、そもそも見ていたところでどこもかしこも同じような煉瓦の壁ばかりだ。 その上、さっきからプレイヤーどころかNPCの姿さえない。
「ほんと、ついてねえな……」
自ら起こしたことじゃないかと叫ぶ心の中の自分を無理やりに黙らせて、煉瓦の十字路に佇む俺は、再びメニューウインドウを呼び出した。
さらにもう一度アイテムの一覧に移動し、左下、『300コル』をタップする。すると想像通り、《トレード》や、《廃棄》(廃棄ってなんだよ)なんかに混ざって、《実体化》の文字が躍っているのが確認できた。すぐさまそれを選択し、コインを一枚だけ実体化させる。
相変わらずのリアル具合にまた感動しながら、俺はウインドウを消去し、十字路をまっすぐ見つめた。どうせ迷ってるなら、運に任せてやろうという気になったのだ。
「表なら右、裏なら左……」
真ん中は……めんどうだ、除外しよう。
暗示のようにそう呟くと、俺は左の親指に1コル硬貨を乗せ、弾いた。
弾かれたコインは、くるくるとすさまじい速度で縦回転を開始しながら真上に飛び上がり、頂点を経由してから、みごと俺の手のひらへと着地した。それと同時に覆いかぶせたもう一方の手を離し、見ると――
「……表、右か」
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