第二話
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ともかくだ、要するに俺に無い経験というのはもっと根本的なこと。
すなわち、《女子と向き合ったこと》なのである。
そんな男が、こんな状況でパニックになれば次にとる行動は一つなわけで――
「……す……す……」
「ん?……す?」
「すいませんでしたァァァァァァ!!!」
俺は全力で頭を下げると、間髪入れずに少女に背を向けて街の中心部を目指し、全速力で突っ走った。
走り出す寸前、少女が何か言っていたような気がしたが、それにも耳を塞ぎ、周囲からの嫌な視線も振り切って、俺はどんどん入り組んだ路地に入っていった。
どれくらい走ったか、感覚も定かではないくらいに走った後、俺はようやく足を止めた。いや、止まった、と言うべきなのか。
「はッ、はッ……はあ、つ、疲れた……足が棒になるって、こういうことなのかな……」
大げさに自分の体力の現状を評価しながら、俺はレンガ造りの壁にもたれかかり、そのまま地面にへたり込んだ。
しかし、仮想世界で疲れるというのはどういうことなのだろう。
本来、肉体的な疲労というのは、基本的に筋肉の運動が原因で発生するものだ。しかし、安全のために脳から体への命令を遮断されているこの状況で、現実の筋肉が動くということが、まして疲れを感じるほど運動することなどあるのだろうか。いや、そもそも感覚がシャットアウトされている時点で現実の体の感覚がこちらまで影響しないのではないのか。
ということは、この感覚は肉体的疲労ではないのか。もしかして、先の少女の緊張が発端の精神的な疲労では……
「っ!そんなわけは……」
ないと言えないのが何とも情けない。
「あーもうやめだ。考えるなこんなこと」
それでも消えない心の中の得体のしれないもやもやに顔をしかめながら、俺はようやく最初の目的であるステータスのことを思い出した。
メニューを呼び出そうとしたところ、懲りない左手が一瞬ピクリと動いたことにかなりの羞恥を覚えながらなんとか右手を振り下ろすと、あの時の俺を嘲笑うような鈴の音と共に長方形のメニュー画面が目の前に出現した。ここには鏡が無いが、今のぞけば湯でガニのごとく真っ赤な俺の顔が拝めるだろう。すさまじく誰得ではあるが。
ともかく、俺はできる限り無心でいるよう努めながら、ウインドウを覗き込んだ。
左側にはぎっしりと詰め込まれたメニュータブが並び、右側には今装備している服の名称だと思われる飾りっけのない名が記された人型のシルエットが浮かんでいる。
わけのわからぬままポチポチとタブ叩いていると、いつの間にかアイテム欄にたどり着いていたようで、人型にあった装備品の名前以外にいくつかの消費系アイテムだけという寂しいラインナップが画面に表示されていた。
武器らしい
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