騎士と武士
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事を何より畏縮する」
「クロスから聞いてはいたが、身内殺すとか最低だろ!」
「同意する。が・・・シャロン様の意は絶対。抗命は不可能・・・というか、抗命しようとさえしない」
「はあ!?何でだよ!」
思わず声を荒らげる。
少し怖かったのか、パラゴーネはびくっと体を震わせた。
「・・・悪ィ」
「問題ない。続行するぞ」
頷く。
それを確認したパラゴーネは口を開いた。
「何故抗命しようとさえしないか・・・殺害されるから、だろうな」
「逆らえば殺されるから、って事か?」
「肯定する。自分が危険に陥るくらいなら被害を最小限に抑塞するんだ。だから、1人が被害を受け続ける」
その1人が、ティアだった。
誰にも助けてもらえず、ずっと1人で被害を受けてきた。
それはきっと暴力的な事ではない―――――精神的な面で、だろう。
だから、ティアはまず人を疑う。簡単に人を信じないし、長い間同じギルドで過ごすメンバーにさえ心を開かない(その分、ヴィーテルシアは異例だと言える)。
単独行動を好むのもそれ故で、誰かの力を頼ろうとしないのも、きっと。
「・・・ひでえ話だ」
無意識のうちに、グレイは呟いていた。
彼女のあの性格は、生まれ持ったものではなかったのかもしれない。
昔から誰にも助けてもらえず、救済を願っても届かず、ただ1人で抱え込むしかなかったのだろう。
だからこそ、誰かに頼る事を知らずにここまで生きてきた。
1人で生きる術を幼い頃から叩き込んで、極力人と関わるのを避けてきた。
もし、もしも、周りのティアに対する扱いが違っていたら―――――――。
「ティア嬢への扱いが違っていたら・・・ティア嬢も、変わっていたのかもしれないな」
グレイの思考を読み取ったように、パラゴーネが呟いた。
紅蓮の瞳は伏せられ、辛そうに表情を歪めている。
「!」
ぽすっ、と。
パラゴーネの頭に、グレイの手が乗せられた。
目線を上げると、微笑むグレイがパラゴーネを見つめている。
「・・・何だ」
「いや、お前って意外といい奴なんだなーと思ってさ」
「むぅ」
パラゴーネが小さくむくれた。
不機嫌そうに眉を顰める。
「意外は余計だぞ、師匠」
「お前の師匠になった覚えはねーぞ」
「私が気随に呼ぶだけだ。構うな、師匠」
「いちいち師匠ってつけなくていい。つか師匠って呼ばなくていいって」
ツッコむが、パラゴーネの師匠呼びは変わらない。
はぁ、と溜息をついて、グレイは諦める事にした。
変な所で意地っ張りなパラゴーネは折れないだろうと判断した為である。
「師匠」
「何だよ?」
「・・・返事をしてくれて嬉しいぞ」
「あーはいはい」
嬉しそうに微笑むパラゴーネを適当にあしらう。
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