第一部 刻の鼓動
第一章 カミーユ・ビダン
第一節 前兆 第五話
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ートを書かない方がいいでしょう。
ログは消去しておきました。
今後、しばらくは図書館に近づかないように。
近いうちにまたメールします。
貴女の味方より』
「どういうこと?!」
メールが目の前で霞の如く消えたのだ。
勢いよく立ちすぎて、椅子がドスンッと派手な音を立てて倒れた。下にも聞こえていただろう。
「消え……ちゃった……」
(え? これって、今日の昼間の図書館で書いていたレポートのこと?誰かにみられたってこと……? でも、ログを消したって……。それになんで、勝手にメールが消えちゃうの? 私の味方……ってどういうこと)
ユィリイには判らないことだらけだった。
だが、一つだけ判ることは、自分が書いた内容のレポートが誰かに見られたということ。それが、軍部の査閲に引っかかりそうだったのだろう。だが、誰かが、そうならないように未然に防いでくれた。
でも、一体誰が?
それに、私を助けてなんのメリットがあるの?
頭の中が疑問でいっぱいになる。
どうしよう。誰に相談すればいいのか、わからなかった。
(教授……話を聞いてくれるかしら……)
だが、他に頼る術もなく、ユィリイは、ワイヤードでスタンフォーレ教授のアドレスを探した。教授の名前をクリックして、テキストメッセージを送る。教授が前にあまりムービーメールや携帯があまり好きじゃないと言っていたからだ。
『スタンフォーレ教授
ファ・ユイリィです。
お話したいことがあります。近いうちにお時間を作ってもらえますか?
ご都合に合わせますので、できるだけ早めにお願いします。
ファ・ユイリィ』
送信ボタンをクリックする。
ボイスメールやムービーメールに慣れているユイリィには、テキストメッセージは妙に堅苦しい気がした。それに、切迫感が伝わっただろうか。
一刻も早く話をしたいと思ったが、そうそう返事が来るものではない。明日は教授の講義はなかったが、ゼミに行けば会えるかもしれないと気持ちを切り替えた。
――ポーン
着信音が鳴る。
丁度、教授はワイヤードに接続していたということだろうか。メールを開くと、明日の三時に大学の研究室に来る様にと書いてあった。
「明日か……」
不意に携帯が鳴る。
最近流行りのポップスである。呼び出し音として設定していたものだった。表示を確かめるとスタンフォーレ教授からである。
慌てて電話をとった。
「もしもし?」
――スタンフォーレだ。今、いいかね?
「は、はい! きょ、教授!」
落ち着いたバリトンが今のユイリィには心地よかった。上ずった自分の声が恥ずかしい。だが、そんなことを言っている場合ではない。
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