高速道路最速奇譚! 後編
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う一台の車を買うまでは勝負をお預けにしてある。
と、会社へ向かう道の途中にコペンが突如低い声を出した。
『粋はん』
「ん?どうした?」
『後ろ見なはれ』
「?」
ミラーに目をやると、真後ろにバイクが走っている。ヘルメットで顔がよく見えないが、ライダースーツに身を包んだスマートな御仁だ。こんな時間帯に一人で走っているのは珍しいが、あれがどうかしたのだろうか。
『見はった?』
「見たが、あれがどうした?」
『顔んとこ、よう見てみ。暫くわっちが運転するさかい』
「お、おう・・・・・・あ。」
ヘルメットで顔が隠れているのかと思ったら、ヘルメットの中にあるはずのものが見えない。つまるところ中身が無いカラッポだった。流石の俺も人面犬を見た時以来のショックで呆然としていると、バイクが真横まで走ってきて、顔なしのライダーがぴっと左手を上げて挨拶する。取り敢えず挨拶には挨拶で答える
「おはよう」
「お早う御座います。貴方が大江戸粋刻殿に相違ないだろうか?」
妙に口調が堅苦しいが、紳士的であることはなんとなく察した。声が渋いね、きっとナイスミドルだ。バイクはホンダのシルバーウイング600か?バイクには余り乗らないが、趣味のいいバイクだと思う。カオナシライダーは片手でハンドルを回しながら恭しく一礼する。
「ワタクシめは、首無騎士のディックと呼ばれたものにございます。実は貴方様が”朝の百鬼夜行”の元締めだという話を小耳に挟みまして、参加許可を賜りたく・・・」
「別に俺が元締めって訳でもないんだけどなぁ・・・」
言ってしまえば俺は単なるペースメーカー。みんなが速度あわせるのにちょうどいいからなんとなくみんな俺に周囲に集まるが、あの通路自体は前から使われていた筈だ。利用し始めた順ならうしろの方である。
だがそれを説明するのも面倒だ。どこから”朝の百鬼夜行”なんて厳つい名前が生まれたのかは知らないが、皆ちゃんと制限速度は守っている。守っていればそれでいいではないか、事故も起こしていないし。
「朝通勤は最低限の運転マナーさえ守っていれば来る者拒まずですから、気が向いた時にいつでもどうぞ?」
「なんと寛大なるお言葉・・・感謝感激雨霰!ワタクシ、至極感激いたしました!」
これまた大仰に両手を上げて万歳するディックさん。一人通勤が余程寂しかったんだろうか。なんかこの人テンション高い。騎士ってことは爵位とか持ってるんだろうか。貴族って言うのはどうしてこう仰々しいんだと昔誰かが言っていたが本当に仰々しい。
まぁいいか、と考え直す。朧車が何を警戒していたのか知らないが、なんにせよこれで明日から高速道路の愉快な仲間が一人増え―――
「そんな素晴らしい人物とあらば首無
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