ルームアウト・メリー 後編[R-15]
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抽象的に情報や人間関係の糸が途切れてしまうのだ。人間が死んで糸が途切れる訳ではなく、皆が皆、薬を流してもらったブローカーを覚えていないという。それ所か中には自分の流す薬物が「マヌタラ」だと知らなかったという奴までいるという。
幸い追跡型怪異であるメリーの力はこの手の捜査に最適であり、俺はノーリスクに等しい形で彼女のサポートに回りながら情報を整理できた。その過程で漸く掴んだ名前、それが「ヨクジン」である。
「ヨクジン」が組織なのか、個人なのか、何を目的として何故その名前なのか、それも一切不明。本当に「マヌタラ」と関係があるのかさえも不明。ただ噂話のように名前が挙がっただけで、それが何なのかは分からない。その分だけガセの情報も多く、まるで都市伝説を追いかけている気分だった。
例えば、この名前はイースター島の伝承に伝えられる「タンガタ・マヌ」という鳥人の伝承をモチーフにした名前ではないかという話がある。
「マヌタラ」というのはイースター島に来る渡り鳥の名前で、「タンガタ・マヌ」は伝承によると創造神マケマケの化身。マケマケはマヌタラに居場所を与えたともあり、鳥人儀礼という「タンガタ・マヌ」に近づこうとする儀式においてマヌタラの卵を最初に見つけた者は卵の霊力に身を守られる。この儀式にはいろいろと続きもあるのだが、つまりその鳥人こそが「翼人」ではないかという説だ。
だが言い伝えによるとタンガタ・マヌには翼など生えていない。顔だけが鳥で、他は人間と殆ど変わらなかったと思われる。名前は符合するが、それだけなのだ。
兎に角、何もかもが謎。政府がこのヨクジン対策の組織を立ち上げたとか、その組織が壊滅させられたとか、その生き残りが社会に紛れ込んで反撃のチャンスを待っているとか、いよいよ都市伝説の様相を呈してきている。
だが、こいつらは確かにいるのだ。でなければ「マヌタラ」が見つかる訳が無い。その名前がはっきりと売人たちの間で認知されている訳が無いのだ。何より、メリーの力を以てしても全容が掴めないという事実が、いっそう疑いを強くしていた。
「取り敢えず今回の情報は”羅生門”の姉さんに渡しておいて・・・この辺りも一通り調べ尽くしたね?さて次はどこで動き回るか・・・・・・」
「会社には行かなくてもいいのかしら?」
「いーのいーの。産業スパイ部門の仕事はこなしてるんだから」
「私の能力でね?そしてその働きで得たお金を人間の貴方が受け取って、その財布で私はゴハンを食べる、と。人間と都市伝説の共存関係なんて聞いたことないわ」
「あれ、あの話知らないのか?」
俺は、あの噂をメリーが知らない事を意外に思った。最近はメリーさんの噂にこんな話が追加されているのだ。
「最近のはお菓子あげたら満足して帰るらしいぞ?名付けてハロウィン
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