ルームアウト・メリー 後編[R-15]
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して用途の分からないプラスチック製の小さな板や、メモ用紙などをひとまとめにして俺に見せ、もう一度ポーチに仕舞った。俺が小さくサムズアップして微笑むと、彼女もぱちりとウィンクをして微笑んだ。
彼女の見せたそれが何の品か。答えは簡単―――とある麻薬売買の証拠品一式だ。
周囲はそんな俺達の会話や行動を、物珍しげに見つつも疑問には思わない。何故ならメリーは都市伝説であり、望まれた者だ。彼女は彼女の集合無意識にそれを望まれているのだから、それに即した都合のいい解釈が周囲にばら撒かれる。メリーさんの都市伝説が実在しながらも表だって気にする人間がいないのは、そういった都合のいい現実歪曲が起きているからだ。事実、俺の周囲の人間は未だにメリーが俺の親戚の子か何かだと信じて疑わない。
しかし、目の前で待ちかねたパイに舌鼓を打っていたメリーの目が不意に鋭くなる。何となく、次に続く情報を悟った。
「喜んでばかりでもいられないけど。”今回も”使い捨ての末端ね。親へと辿っていこうとも思ったけど、やっぱり3,4人梯子した辺りでぷっつり途切れるの」
「メリーの追跡でも追えないとなると・・・・・・都市伝説級の怪異、若しくは未知の存在か」
「都市伝説と都市伝説はその本質が同じであることが多いから、伝説同士が敵対することはまずない。今回のこれはその例外にも含まれない。完全に未知ね」
「―――ヨクジン、か」
俺達がこんな真似をしている理由は、葬式が終わった頃に遡る。
家族を失った俺が人形に姿を変えたメリーと共に行動するようになってから、俺はふとテレビでやっていた麻薬関係の事件を見て思いついた。
母さんに麻薬を売った相手に、彼女の能力で復讐できないだろうか。
母さんが死んだのは誰の所為、と一概には決めつけられない。
だが、少なくとも麻薬の売買人はその一端を担った筈だ。
御咎めなしでは母さんも未練が残るかもしれない。そう思って俺は、メリーと一緒に探偵の真似事を始めた。メリーの超常的な力で警察の資料を調べた所、既に母さんに薬を売った男は逮捕されていた。しかしそこで俺とメリーは思わぬ事実を発見することになる。
母さんが買ったというその薬物・・・売人の間では「マヌタラ」と呼ばれているその薬物は、いったいどんな材料を使い、どんな方法で加工された薬物なのか、更には一体どこからこの薬物が国内に流入しているのか一切不明だというのだ。
「マヌタラ」自体は、強力ではあるがその効用や副作用は他の薬物とそう変わらない。だが、この薬物が日本で発見されるようになってから既に10年近くたっているにも拘らず、未だに詳しい事は一切わかっていないというのだ。
麻薬捜査官が何度危険を冒して探っても、大掛かりな組織には決して辿り着かない。物理的にではなく
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