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【短編集】現実だってファンタジー
ルームアウト・メリー 後編[R-15]
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がなかなか美味しいからやめられない。

まぁ接種分のカロリーをちゃんと使い切れば問題ないし、毎日食べている訳でもない。これくらいでメタボリック症候群になるほど不健康ではないから、気にせず食事を続けることにした。
「相方」の分の飲み物とパイもあるのだが、果たしてこれらが冷めてしまうまでに戻ってくるだろうかと心配する。ここのパイは作りたてがとても美味しいのだ。相方もそれを気に入っているだけに、冷めてしまっては自分だけ作りたてのものを食べたことが申し訳なく感じてしまう。

それから数分後―――トイレから一人の少女が俺に近づいてきた。金髪碧眼で、可愛らしい女の子だ。外国人の、しかも子供が一人で歩いているのを物珍しがって周囲の目線を集める。

もしもこの店を四六時中観察していた人間がいれば、異常に気付いただろう。
店が定時にオープンしてから金髪碧眼の女の子など「一人も来てはいない」のだから、当然トイレから彼女が現れる訳が無い。だが人々は気付かない。おかしいと思っても、それは現実に起きているのだから気のせいだろうと勝手に思い込む。
それこそが、この世界に「怪異」の入り込む隙間を形成しているとも知らず。

少女は当たり前のように俺の隣に座ると、トレーの上にあったポテトを一つつまんだ。一気に口に入れられないのか、先端からちまちまと食べている。

「早かったな?」
「まぁね」

そう言って彼女―――相方(メリー)はトレーの飲み物に手を伸ばした。
食事も必要なければ排泄もしない彼女の身体だが、食事自体は楽しめる。
「臨時収入」もそれなりにある以上、食事代をケチって彼女の楽しみを減らしたくはない。
もう彼女とも、それなりに長い付き合いになるし、俺とメリーは独りぼっち同士だ。同僚とも仲間とも家族とも違うが、友達ともちょっと違う、そんな関係だ。

メリーは、あの日以来俺と一緒にいる。
彼女の発現する都市伝説は、迎えるべき「終了」・・・つまり物語におけるオチを失った未完のストーリーと化しているらしい。原因は、集合無意識がイメージするゴールを見失ったからと思われる。
着地点を見失ったメリーは人間と人形の境さえ曖昧になり、今までとは違い自分の起こす事象をある程度自分でコントロール「しなければいけない」事になった。当然ながら、次のターゲットも指定されなくなったからやることが無い。集合無意識という首輪が突如消失して寄る辺も従う者もいなくなった彼女は、家族を失って一人ぼっちの俺とつるむようになったわけだ。


そして暇を持て余す彼女の力を借りて、俺はある存在を追いかけている。


「思った以上のお間抜けさんだったわ・・・隙だらけだったし電話にひどく怯えてたから、簡単に押収出来たの」

ポーチの中からメモリーカードと白い粉末、そして一見
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