ルームアウト・メリー 後編[R-15]
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えで自殺していた。死んでまで俺に迷惑をかけたくないという心遣いなのか、子供に尻拭いをさせるのが嫌だったのかは分からないが、心の内で感謝した。
葬式には多くの人がやってきた。大多数が父の知人で、後は母の同級生とうわべだけかと思っていた友達と、ご近所の人達で執り行われた。
顔だけ悲しそうにしている人もいれば、本気で悲しんでいる人もいる。割合として後者の方が多かったのは、親父の人徳だと思いたい。今更掌を返すようだが、そうであってほしいと思える程度には父を認められた。
火葬後の母さんの骨がバラバラでほとんど残っていなかったのは、麻薬に体を蝕まれた所為なのだろう。少し悩んだが、辛うじて残った骨を親父の骨壺に一緒に入れる事にした。もう2人とも何も悩むことはないのだから、親父も母を負担に思う事はないだろう。俺は一人で立派にやっていける。もう世間体も気にせず、安心して旅立ってほしいと願った。
葬式後も友達やご近所に色々と訊かれたり、励まされたりした。家出のこともあり、今までどこにいたのかと言ったことも多く聞かれたが、話していればしんみりした空気も少しまぎれて、内心で感謝した。例え形だけでも友達ならば、友達として接することが出来る。
互いに無意識化に友達像を作り上げておけば、相互コミュニケーションはとれる。それはきっと人間関係全てにおいていえる事なのだろう。ただ、俺は両親に対してだけそれを失敗したのだと思うと、それが切なかった。
そして、あらかたの事が終了し―――数年が経ったある日。
ハンバーガーショップで呑気にチキンを齧っていた俺は、油の付着した指をウェットティッシュできれいにふき取りながら、極めて自然に、自分の鞄の中に手を突っ込んだ。そのまま中にある財布を探す風に見せながら、鞄の底にいた「あるもの」を指先で二度突き、ぼそりと呟く。
「売人は右端の席にいる帽子の奴だ。追跡と情報収集、お願い」
『確認したわ―――私メリーさん。今、貴方を追っているの』
その鼓膜を直接振動するような他の人間には聞こえない特殊な音と共に、鞄の中の「あるもの」が消滅する。その影響か、鞄の中に突っ込んでいた手が財布を捉えた。これはラッキーだと財布を取りだし、そして「そういえばハンバーガーショップは前払いのシステムだった」と迂闊な自分に呆れる。代金はとっくに払った後だった。
ついでだから財布の残金を確認して、余裕があることが判明してもう一度鞄に財布を放り込む。
ちらりと右端の席に座っていた男を見ると、目に見えて動揺したまま逃げるように店を後にしていた。片手にはスマートフォンが握られている。その背中を眺めた後、慌てる訳でもなくトレーの上にある紙袋を開け、中にあったハンバーガーを一口齧った。ジャンクフードと分かってはいるが、これ
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