暁 〜小説投稿サイト〜
戦争を知る世代
第二十一話 別れと、違える道(前編)
[4/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
さえ見せない。20人ほどはいるその相手は、それぞれが懐から獲物を取り出し、身構えた。異様な緊張感と殺伐とした冷たい空気が辺りを包む。土を踏む足に力が入り、姿勢が少しずつ低くなる。お互いが飛びかかる隙を窺っているのだ。張り詰めた糸が今にも切れる・・その刹那、彼らの頭上から、そして地面から無数の人間が現れた。仮面を被り、表情を隠す彼らは瞬く間に“菜野一族”へと飛び掛かる。菜野一族は思わぬ奇襲に驚き、動きが止まった。それによって出来た隙を逃す程、二人の上忍は甘くない。低くしていた姿勢から駆け出し、瞬く間に敵へと攻撃を加えた。

「暗部か・・っ!」
俺も驚いた。中忍と成り、それなりに力に自信があったのに一片たりとも暗部の接近に気付かなかったのだ。暗部の数は10人程だが、数をものともしない圧倒的な強さで瞬く間に敵を打ち倒していく。

「間に合ったか・・・。しかし、ちと遅かったの。代償はあまりにも大きい。さて、行こうかの、カカシ。」
火影様がそう、俺に声を掛けた時にはすでに、この場にいた“菜野一族”は全員が地に臥していた。赤い血飛沫が辺りに散らばり、降り頻る雨がそれを洗い流そうとしていた。

「お前も、ここまで見てしまった以上は“知らぬ事には出来ん”からの。おいで、カカシ。」
止まって動こうとしない俺に対して、火影様はもう一度声を掛けた。身体を叱咤し、動こうとしない身体を無理に動かした。この場にいた人間は、ふしみイナリと女の子の下へと集まる。トバリと呼ばれた上忍が、二人を仰向けに寝かせた。

「・・・どうじゃ、トバリ?」
遠慮がち、そう言うに相応しい程の小さな声で火影様が問い掛ける。分かっているのだろう・・・目の前の現実が。
 トバリと呼ばれた上忍は、ゆっくりと首を横に振った。全員が息を飲む。“死”を常に感じる人間ですら、この光景に何か感じるのかもしれない。

「イナリは、息をしています。しかし・・・ハナは、もう。」
そこで言葉が詰まる。トバリと呼ばれた上忍は俯いて肩を震わせていた。泣いているのかもしれない、いや、泣いているに違いない。俺ですら、何か熱いものが胸を渦巻いて、チクチクと針を刺すような痛みを感じるのだから。

「済まぬ・・・儂がもう少し強硬に策を講じておれば、こんな事にはならんだかもしれぬ。菜野一族のクーデターも、菜野ハナの事も・・・。」

「い、いえ・・・そんな事はありません。火影様の御考えは間違いではなかったと、思います。強硬策を講じていれば、菜野一族はもっと強い反抗に出た筈です。ですが、ですが・・・こんな結果は、あんまりだ。不条理だ・・・。」
その言葉には、憎しみすら感じる。この気持ちは知っている。だから、分かる。“あの人”が自宅で首を吊ったただの肉塊と成した時、その光景を見た俺は同じ思いを感じた。何のだこれは
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ