第二十一話 別れと、違える道(前編)
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は走った。走って、走って、追いかけた。それでも彼女は、その微笑みを絶やすことなく遠ざかる。まだ走る。手を伸ばして彼女の名前を呼ぶ。それでも、手は届かなかった。
そこで、僕の意識は途絶えた。
同時刻
木ノ葉隠れの里 共同墓地
はたけカカシ
目が離せない。大粒の雨が降り、大きな水溜りをいくつも作っている共同墓地の真ん中で、女の子と男の子が抱き合う。ただ、それが通常のそれと違うのは、黒く光るクナイが女の子に刺さり、赤い血が滴るところだろう。
何故だか分からない。俺はその光景から眼を離す事が出来なかった。心がざわついて、鼓動が激しく音を立てる。時間の経過すら分からない程に、それに目が留まり、それだけが思考の全てを支配していた。
「そんな・・・こんな事って・・!?」
動揺と悲愴に包まれる声が隣から聞こえた。どうやら視界の端で上忍が呟いたらしい。その声が、思考を取り戻すきっかけとなった。ミナト先生と、火影様に至っては言葉も発しない。ただ、今までに見た事のないような表情を浮かべて時を止めている。
ふと、辺りを照らしていた“青い炎”が消える。全てを黒に染めるような宵闇が、再び地に降りかかってきた。静寂が包み、雨が地面に落ちる音だけが響く。
抱き合っていた二人は倒れ、折り重なるように地に臥していた。女の子を下にして、男の子・・ふしみイナリが覆うようにして。それは、彼女が死んだであろう今も、守るという意思を見せているように見えた。
その刹那、彼らの傍で蠢く影が目に付いた。片手を抑えながら、ゆっくりと彼らに近づく。その影は、何事かを呟いていた。
「・・・ナ・・・ハナ・・・。良くやった、それでこそ、私の娘だよ。父を守り、死ぬ。なんて、親孝行な娘だ・・・。それに引き替え、罪を背負った親に助けられ、卑しい身でありながら生きる君は、やはり“悪”だよ。死んで当然だ・・・。」
その言葉に戦慄を覚える。あぁ、親なんてこんなものなのだ。里の英雄と謳われた“あの人”だって、俺を置いて行った。子供の気持ちなんて、微塵も考えてやしない。俺は身を固くして、そいつを睨みつけた。負の感情をたっぷりと染み込ませて。しかし、そいつはこちらに気付く様子もなく、ふしみイナリと女の子に近づいて行った。
「まずい!ミナト、トバリ・・・!」
火影様が緊張した声を挙げる。
「「はい!」」
二人の上忍は火影様の言葉を瞬時に理解し、返事と共に走り出す。しかし、彼らは多数の人間にその進路を阻まれた。
「・・・くっ!あなた達は本気なのか?!こんな事をして何になるって言うんだ!」
「どいてください、皆さん。今ならまだ、火影様のご容赦も考えられます。懸命な判断をお願いします。」
二人の上忍は口々に、そう促すが、相手は聞いているような節
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