第百七話 決戦の前にその八
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「受け入れられないので」
「暗夜行路はそうした作品なんですね」
「他の志賀直哉の作品とは違います」
「そうですか」
「はい、そうです」
全く、というのだ。
「あの作品は」
「だからですか」
「先生もです」
「正直その講義は嫌々受けていました」
実際にそうだったというのだ。
「何故暗夜行路かと思いました」
「それどんな講義だったんですか?」
樹里は高代の話の内容を詳しいところまで問うた。
「それで」
「京都を題材にした文学作品を学ぶという講義だったのですが」
「志賀直哉が、ですか」
「志賀直哉は京都というイメージはないですね」
「はい、とても」
そうだとだ、樹里も答えた。
「この人は」
「仙台藩の人ですし」
高代も志賀直哉のこのことについて知っていて話す。
「それに東京に長い間いましたし」
「大学は東大ですよね」
「そうです」
志賀直哉もこの大学にいた、ただ中退である。
「高等部までは学習院です」
「じゃあ東京ですよね」
「あそこですよね」
「奈良にいたこともありますが」
関東大震災で逃れて、である。
「ですが」
「それでもですね」
「京都は」
「はい、あそこはです」
京都はというのだ、志賀直哉と京都は。
「どうしても結びつきませんでした」
「そうですか」
「それでもですか」
「その講義では暗夜行路が使われていました」
「ううん、志賀直哉と京都」
「本当に関わりなさそうですね」
二人も首を傾げさせる、志賀直哉について調べてみているがそれでもどうしてもつながりのないものであった。
「どうにも」
「結びつかないです」
「何でも暗夜行路の舞台の一つにもなっていたそうですが」
「それで、ですか」
「テキストにもなってたんですか」
「それでも本当にです」
どうにもというのだ、高代も。
「訳がわからず、講義は最後まで嫌々受けていました」
「それで単位取れたんですか?」
上城は高代にその講義の結果を尋ねた。
「それで」
「はい、一応は」
「そうですか」
「優良可で良でした」
それになったというのだ。
「ABCで言うとBですね」
「じゃあ合格ですね」
「はい、そうでしたが」
それでもだったというのだ。
「ですが」
「講義としてはですか」
「納得出来ないままでした」
「京都なのに志賀直哉というのがなんですね」
「三島由紀夫の金閣寺が去年の題材と聞いていたので」
「今年も金閣寺だと思ってたんですね」
「金閣寺でなくとも」
三島由紀夫のその代表作でなくとも、というのだ。
「他にも京都を題材にした、それも主にした作品は数多いので」
「京都ってそういうの多いですからね」
「はい、ですから」
それでだったというの
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