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久遠の神話
第百七話 決戦の前にその七

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「これどうかしら」
「万暦赤絵だね」
「これも志賀直哉の代表作らしいから」
「じゃあそれにする?」
「それかね」
 若しくはと言う樹里だった。
「母の死と新しい母とか」
「あっ、お母さんが死んだ時の」
「ふうん、志賀直哉ってね」
 ここで樹里は資料を読みつつこうも述べた。
「お母さんは若くして死んでるのね」
「生まれの母はね」
「そうなのね」
「それでお父さんと仲が悪かったんだね」
「そう書いてるわね」
 資料にはだ。
「確かに」
「うん、それでだけれど」
「この作品がいいかしら」
 母の死と新しい母で、だというのだ。
「課題は」
「これでいいんじゃないかな、長編だとね」
「暗夜行路ね」
 志賀直哉の作品で唯一の長編である、和解も彼の作品にしては長いがジャンル的には中編と呼ぶべき長さだ。
「あの作品ね」
「あれはね」
「長いわよね」
「長過ぎるよ」
 課題としては、というのだ。
「すぐに読めないから」
「止めた方がいいわね」
「ちょっとね」
「はい、暗夜行路はです」
 ここで第三者の声が来た。
「課題とするには大作ですね」
「あっ、先生」
 二人はその第三者の声に応えてその声がした方に顔をやった。そこには高代がいた。
「いらしてたんですか」
「たまたまです、調べることがありまして」
「それでなんですか」
「この図書館に」
「はい、来ていました」
 そうだったというのだ。
「それで今お二人のお話を。聞くつもりはなかったのですが」
「それでもですか」
「私達の話を聞いて」
「そうです、それで志賀直哉の暗夜行路ですが」
 高代は微笑みこの作品について話した。
「高校生には重い題材でしかも人を選ぶものです」
「人を選ぶんですか」
「小説が」
「題材によっては」
 その小説のそれによっては、というのだ。
「そういう小説もあるのです」
「そして暗夜行路がですか」
「まさにそういう小説なのです」
 そうだとだ、高代は上城に話した。
「あの作品は」
「だからですか」
「高校生の課題にはです」
「お勧め出来ないのですね」
「私も大学の講義でテキストで使われていて」
 その暗夜行路が、というのだ。
「困りました」
「困ったんですか」
「はい、好きではなかったので」
「暗夜行路がですか」
「僕もああした題材はです」
 暗夜行路のそれがというのである。
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