第二十九話
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「いいわね?さっきまでのことは忘れなさい」
「もう今更だろ。あのやり取り、結構やってるし」
そう言ったらにらまれたので、肩をすくめてはいはいと返事をする。
忘れるのは無理そうだけど。
「そういや、ラッちゃんはどうして零厘に?」
「ラッちゃん言うな。・・・特にないわ。強いて言うなら、一人暮らしがしてみたかったのよ。それに、ここは名門だからあたしみたいな中途半端なのがいても、まだ目立たないでしょ?」
「なるほどね。確かにそうだ」
八分の五妖怪。普通ならものすごく目立つだろうけど、ここならまだましになるよな。
「まあ、まさかそこで薄情な幼馴染に再開するとは思ってなかったけど」
「それは・・・まあ、スマン」
「もういいわ。これ以上隠しごとをしたら、」
その瞬間、俺は反射的に顔を逸らしてしまった。
いかん、つい昔のくせでやってしまった・・・
そして、俺がこうしたときは何か隠し事がある事をよく知っているラッちゃんは席を立って回り込んできたので、さらに逸らして・・・最終的に両手で頬を挟まれて、強制的に目を合わせられる。
「まだ何か隠してるのね?」
「ナンノコトカナー。オレワカンナイ」
「棒読みになってるわよ」
このやり取りもまた懐かしいんだけど、懐かしむだけの余裕がない。
さて、このまま誤魔化すのはまず間違いなく無理だよなー・・・
「・・・まあ、あるけどさ」
「ほらあるんじゃない」
「ただ、国家機密に触れるといいますか・・・」
「今更でしょ、そんなの」
うん、その通りです。
むしろ、鬼道の方が機密レベルは高いんだよな・・・とはいえ、こっちは話したら反応がどうなる事やら・・・
「・・・さっきの方は、もうすでに知ってたから話した。でも、次のは」
「あたしは一切知らない、ってこと?」
「そういうこと。だからまあ、ラッちゃんがその辺りについて知っちゃったり、話さないと説明できないような事態になったらちゃんと言う。それじゃダメか?」
「・・・その時になったら、ちゃんと言いなさいよ」
「ああ、約束する。本当にごめんな」
「いいわよ、そう何度も誤らなくて。後、ラッちゃん言うな」
最後にそう言い残して、ラッちゃんは俺を放して席に戻った。
うん、ようやく空気が元に戻った。
「はぁ・・・そう言えば、アンタ本気?」
「というと?」
「委員会の話よ。本気でクラスとかからの選出をしないつもり?」
「ああ、そんなことか。もちろん本気だぞ」
「たった三人で全部やれると思ってる?」
「大抵のことは俺一人でもできる。最悪、手が足りなかった時のために殺女を入れたんだし、資料とかのたぐいは雪姫に頼めばいいからな」
「ああ・・・最後の一人は雪姫さんなのね」
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