暁 〜小説投稿サイト〜
ぼくらウォーズ
第0部
第一章 東京と神奈川の境らへんとか
EPISODE 1 垂れ流した

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私鉄の線路沿い。
一段低い所に線路が通っている。
この線路に沿って道を歩いていくといつのまにか道と線路の高低差が無くなって、巨大な鉄橋を渡る頃には自分の方が低くなっているというから不思議だ。
高校に進学したことを機に、伯父さんはいっしょに免許を取ろうと言った。
僕は特に資格や免許を持っておらず、持っていてもアマチュア無線4級か漢字検定くらい。
そんな僕にとってバイクの免許を取るということは、世界がうんと広くなるということと同じだ。
僕は原付の免許を取ったのだけど、伯父さんはもっと上の免許を取って一緒にツーリングをしようと言ってきたけど、僕は運転下手だから断った。
僕はホンダの青いスーパーカブ(中古 排気量47cc 走行距離1万キロ程)を買った。
父さんからは維持管理やガソリン車検きちんとしろよと言われたけど、そういう事をする必要も無くなった。
まだ寒い5月、あの線路沿いで。
あの出来事があったから。


女の子が飛び出してきた。
白い夏用シャツにベージュのサマーセーター。
歳は、13か4くらい。

人には運命というなにかが取りついていて、その「なにか」は、人が進むべき道に立ちはだかる分岐点で人がどこへ行くかを決めることができる。
たとえ、そこに至るまでの直線区間(人生というものは無数の分岐から成り立っているが)でその先にあるであろう分岐でどちらに行くか決めていたとしても、その決定自体その「なにか」によるものであり、たとえ赤ちゃんが死産しても、その、「死産するという運命」を決めたのも「なにか」である。(と言ったら少し残酷だが。)
僕の場合、その「なにか」、意思であり、運命である「なにか」がたまたまこういう采配をしたという事になる。


「消防ですか?救急ですか?」
「救急です。オートバイで人をはねてしまいました。」
「負傷者の年齢、現在の容態は?」
「中学生の女の子です。倒れたままで動きません。」
「わかりました。場所はどちらですか?目印が何かあれば教えてください。」
「東京都**区**4丁目12番の1です。すぐ隣に**電鉄**線の線路があります。」
「了解しました。今すぐ救急隊をそちらへ向かわせます。負傷者の傍から離れないで、その場で待って、応急手当てを続けてください。」


僕の場合、たまたま運命が残酷だっただけかもしれない。
たまたま、バイクでそこを走っていて、たまたま、そこに女の子が飛び出してきて、たまたま、ぶつかった。
それだけかもしれない。
たまたま、駅でばったり出会った。
たまたま、パンをくわえて走っていたら男の子とぶつかった。
たまたま、スワンクリスタルはゲームボーイとの競争に負けた。
たまたま、こんな事が起こった。
それだけだ。
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