第一部 刻の鼓動
第一章 カミーユ・ビダン
第一節 前兆 第二話
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いか』という見解を示します。これを受けて、世界は『合併か分離か』という命題に世論が沸騰していきます。折しも中世的経済発展の停滞時期にさしかかっていたことが、人心を不安に陥れ、紛争が頻発する結果となりました。」
手を休めて画面を食い入るように見つめる。
(これじゃ、歴史の教科書じゃない……)
自分の書いた文章を読み返して苦笑する。だが、それが事実だった。人類は何度となく似た様な世界情勢を繰り返している。そして、前へもっと前へ、より巨大により拡大していっている。二十一世紀半ばの人口は一年戦争によって半減した現在の人口よりも多い。それが、スペースコロニーもなく、全て地球上に暮らしていたなんて、ユィリイには信じられなかった。実感がないのである。スペースコロニーでさえ、一年戦争前には一島あたり一五〇〇万人いたものだったが、ここ〈グリーンノア〉にいたっては五〇〇万人にも満たないほどしか居ない。一体どれほどの人がひしめき合っていたのだろうか。それは想像を遥かに超えた生活環境であったに違いないとユィリイは藐然と考えていた。
「また、二十一世紀は軍隊が国家間戦争よりも対テロ組織へと変貌していった時代であると言えます。このことは、軍事活動が国境を越え、国際的に協力し合わねばならない事態であり、それぞれの国での対処が難しく、より専門的組織が必要とされ、国際連合に対テロ常備軍が設立されるきっかけともなりました。
このテロリズムは、世界の警察を自認してきたアメリカが、イラクのクウェート侵攻に端を発する湾岸戦争で軍事力を強引に誇示したことでイスラム圏の過激派との対立を深め、泥沼の平和維持軍の投入を余儀なくされていったことが発端です。
ソビエト連邦軍のアフガニスタン撤退で軍事力の低下から連邦統制力を失って解体となったのと同じく、中国の民主化改革における周辺自治区の独立に、中国政府の要請で介入し、装備に劣るはずの独立軍に敗退したことがきっかけで、東西分裂を招き、その影響力が低下したことも背景にあると言われています。
二十一世紀後半の世界規模での紛争は、主にアラブ諸国を中心に起きており、イスラム圏を主とする分離主義と、ヨーロッパ諸国を中心とする合併主義は、対立したままその溝を深めていきます。しかし、欧米諸国は国際世論に押される形で、二十二世紀初頭に対テロ常備軍を中核とした国際連合軍に、アメリカおよびロシアを含むヨーロッパ諸国の各国軍がこれに倣うと、これに比肩できる軍隊は地球上に存在せず、西暦二一四五年、武力を背景にした地球を統一国家が誕生しました。
これが地球連邦政府です。」
――カチッ。
改めて思うと地球連邦政府というのはなんと高圧的な政府なんだろう――そう思わずにはいられない。日常生活している上では感じないが、歴史を振り返れば振り
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