第一部 刻の鼓動
第一章 カミーユ・ビダン
第一節 前兆 第一話
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なく戸籍を移動させることはできないからだ。そして、宇宙開発関連や軍関係産業に従事する人間以外、スペースノイドは戸籍がないサイドへの移住を制限されている。名目は治安維持のためであったが、ジオンの再来を恐れてのことであることは誰の目にも明らかだった。
サイド7は月の反対側、第三重力緩衝点――通称、L3のハロ軌道を巡る安定宙域に設置された最も新しいサイドである。サイドとは四〜五〇基のスペースコロニーを単位とする地球連邦政府の自治領である。一年戦争以前は中央政府の殖民地としての立場が強く、自治さえ行われていなかったが、現在は、サイド単位での自治政府が存在している。
サイド7は一年戦争で一度壊滅した自治領である。
生存者ゼロ。
当時たった一基のコロニーしか存在しなかったサイド7は、現在、再開発が始まり、二基のコロニーが存在する。1バンチコロニー〈グリーンノア〉と2バンチコロニー〈グリーンオアシス〉である。再開発には、ジオン共和国が全面的にバックアップをしており、現在でもジオン共和国籍の開発関係者は多い。特にモビルスーツ関連工学や造船・通信・光学関係などの科学技術面においては、いまだにジオンに一日の長があった。
コロニーの最大人口は一五〇〇万人だが、〈グリーンノア〉への入殖人口は五〇〇万人に満たない。
折角始まった入殖だったが、〈グリーンオアシス〉がティターンズに接収されて以後、軍人家族の居留先として機能し始めたため、連邦政府によって、入殖が停止した状態である。特に、ジオン技術者は〈グリーンオアシス〉から締め出され、開発が遅々として進まない状態に追い込まれていた。
「何いってんのよ。アンタみたいにガードの固い子、みーんなとっくに諦めてるんだからっ」
笑顔で答えるユイリィに、メイリンはやれやれという表情を返した。無理しちゃってという声なき声を、ユイリィは感じ取ったのか、べーっと舌をだして、はにかんだように笑った。
確かに誰かが噂なんて考えても居ないことだった。軽口にもほどがあるとメイリンは言いたそうだ。それもそのはず、ユイリィが自分のことを話してほしいのはひとりだけなのである。
士官学校へ行ってしまった幼なじみが、連休のたびに帰ってくるんじゃないかと、ベイエリアへ度々足を運んでいることは、友人も両親も知っていた。家族のように育った幼なじみが居なくなって、もともと男づきあいのない少女が余計に男っ気がなくなったことを心配もしていた。
「士官学校ってさ……」
「また、カミーユの話? そんなに気になるんなら、押しかけちゃえばいいじゃない」
「え?! 何行ってるのよ。そんな簡単に行かれるわけないでしょ?」
スペースノイドにとって、コロニー間の旅行でさえ経験せずに、一生を終える人の方が多い現実を知った上での冗談だ。
これは、コロニー
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