第十話
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ん」
背後でギャーギャー騒いでいる女の子を放って早々に立ち去る。
予定より随分と時間を掛けてしまったが、目当てのものを購入した俺は先ほどの女の子と鉢合わせしないようにルートを変えて帰宅した。
その途中、小さな公園でブランコに揺られている少女を目撃する。
すわ、またあの女の子か!? と身構えたがどうやら違う模様。少女は見たことのないフリフリの服を――後にメイド服だと知った――着ており、なにより日本人ではなかった。
年齢は自分より四つほどの年上。背中の半ばまである銀髪に端正な顔立ちをした黄金色の瞳を持つ少女だ。
そしてなにより、彼女は美少女だった。
――妖精さん?
愁いを帯びた表情も合わさり、まるで御伽噺の国から現れたかのような、そんな錯覚すら覚える。
少女に見惚れていた俺だったが、雨に打たれている姿に我に返ると慌てて持っていた傘に入れた。
肩が少し濡れてしまうが、気にせず「どうしたの?」と声を掛けた。
少女があまりにも小さく見えたのだ。まるで世界に取り残されたような、親とはぐれた子供のような心細さを幼心ながら感じた。
少女はびっくりしたように顔を上げたがすぐに俯いてしまう。
相手が少女より子供だったため気が楽になったのだろう。ぼそぼそと胸の内を語り始めた。
「私は……ダメなメイドなのです」
メイドという職につくことが約束された少女は見習いとして励んでいるが、一向に成果が上がらない。
いつも失敗ばかりで母に怒られ、ほかのメイドたちに迷惑を掛けてしまっている。
期待してくれている母に申し訳が立たない。
全然仕事が出来ず、失敗ばかりの自分が嫌い――。
子供だった俺は少女の話の半分以上理解することも共感することも出来なかったが、彼女が苦しみ悲しんでいることだけは分かった。
なんとかしたい。悲しい顔をしてほしくない。
焦燥感にも似た感情に突き動かされながら、彼女の苦渋を和らげたい一心で口を開いた。
「じゃあぼくがおねえちゃんをえがおにしてあげる! ぼくはせかいいちのまじゅつしだから!」
事実、俺は世界一の魔術師。それは自他ともに認めるところである。
当時はその称号の意味するところを理解していなかったが。
「じゃあ笑顔にしてみてください」
出来るはずがない。言外にそう云っている表情。
信じてもらえていないことが悔しくて、意地でも笑顔にしたいと少しだけ思った。
しかし俺は少女の心が読めるわけではない。彼女の欲するところがどこにあるのかわからない俺は無
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