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まぶらほ 〜ガスマスクの男〜
第十話
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チと燃え盛る焚き火の音に「ニャーッ!!」と嫌がる猫の声。


 そして、そんな猫の足を掴んで今にも焚き火で炙ろうとしていた女の子は傘を差しながら無垢な瞳でこういったのだった。


「なにって、お腹が空いたのでちょっとそこにいた野良猫で満たそうかと思ったんですけど」


「だめだよ! ネコさんかわいそうだよ!」


「でもお腹が空きました……なら食べるしか」


「ニャーッ!?」


 とても文明人とは思えない思考の少女。当時の俺は彼女の腹を満たせば猫は助かると考えた。


「じゃあぼくがなにかおかしかってくるから、そこでまってて!」


「え? 本当ですか?」


「うん! だからネコさんはなしてあげて!」


「それならいいですよ」


 女の子は猫をぽいっと投げ捨てる。華麗に着地した猫は一目散に逃げ出し、俺は安堵したのだった。


 そして急いでコンビニに駆け込み、なけなしのお小遣いを使ってお菓子を数点購入。そのまま急いで少女の元へ向かった。


 貪るようにポテトチップスなどのお菓子を堪能した女の子はようやく一息ついた様子を見せた。


「ご馳走様でした。……そういえば自己紹介がまだでした。わたし宮間夕菜っていいます」


「ぼくはしきもりかずき! 」


「和樹さんですね。ポテチおいしかったです。和樹さんは良い人なんですね!」


 キラキラした目で見てくる女の子に気恥ずかしさを覚える。


「わたしの周りの人はみんなひどい人ばっかりなんですよ。聞いてください! この前なんて――」


 それから何故かマシンガントークが一時間も始まった。


 お使いを頼まれていた俺はいい加減この場を離れたかったが、素振りを見せるたびに潤んだ目で見つめられるのでなかなか逃げ出せないでいる。


 話はお互いの内容まで広がり、俺が世界一の魔術師だと知った女の子は目を輝かせた。


「本当ですか!? じゃあじゃあ、この雨止ませてください! わたし雨嫌いなんです!」


「え? でもぼく、まほうつかっちゃいけないっていわれてて……」


「いいじゃないですか! 一回くらいで死にはしませんよ! あと七回もあるんですから!」


「けど……」


「じゃあ、もしできたらわたしが和樹さんのお嫁さんになってあげます!」


 女の子の押せ押せの姿勢にたじたじになる。


 ここに来てようやく、彼女が関わってはいけない人種なのだと知った。


「ごめんね。もういかないと!」


 ここは早く離れたほうがいいと、子供ながら悟った俺は適当に話を流しその場を離脱する。


「あっ、待ってくださいよ和樹さー
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