第十話
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ことが出来ず、半ば八つ当たりのような要求をしたのです。
「じゃあ笑顔にしてみてください」と無茶で可愛げのない要求。
男の子は「うん!」と頷き、しばし考えに耽ると、空に突き出した手から一筋の光を生み出し、奇跡を起こしてくれました。
――ふふ……思い出してくれましたか?
はい、そうです。男の子は雨雲を吹き飛ばし、あろうことか流星群を引き寄せたのです。
夜空を切り裂く星々の群れに、息をするのも忘れて魅入られました。今でもあの光景は鮮明に思い出せます……。
――後になって知ったことですが、当時の流星群の観測は十年は先の予定でした。
そして悲しみや不安も忘れて夜空に見入る私に男の子は言ってくれたのです。
「おねえちゃんのきれいなえがお、ぼくはすきだな」と。
今思えば、あのときの男の子の屈託のない笑みが切っ掛けだったのでしょう。
まだ年端もいかない男の子に一目惚れしたのです。
――そんなことがあるのか、ですか? 一目惚れはあります。私自身が経験したことなのですから本当です。
その後、男の子は用事があるとのことで帰ってしまいました。入れ替わりに膨大な魔力を観測した母たちがやってきたのです。
私は将来メイドになり主を迎えます。今までは主となる人の想像なんてつきませんでしたが、いつかご主人様とお呼びするならあの男の子がいいなと思うようになりました。
それからの私は立派なメイドになるために頑張りました。挫けそうになってもあの男の子を思い出して心を奮い立たせて。その変わりようは母が心配するほどです。
男の子と再び会えることを夢見た私は、彼のことが知りたくて色々調べました。このときはちょっと気になる男の子程度の認識でした。
ですが、調べていくうちに段々彼に魅かれていく自分自身を自覚しました。『ちょっと気になる人』から『好きな人』に変わったのです。
† † †
「これが、十三年前の夏の夜の話です」
そう締めくくり目を閉じる。
リーラの語ってくれた話は俺の埋もれた記憶を呼び覚ますに十分だった。
(ああ……なんか思い出してきた)
あれは高城家に厄介になって数ヶ月のことだった。
おばさんに買い物を頼まれた俺は傘を差して商店街に向かっていた。
その道中、信じられないものを目撃したのだった。
「な、なにしてるの……?」
公園の片隅で女の子が猫を火で炙ろうとしていたのだ。
雨の中パチパ
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