第三章
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第三章
「私をこの宮殿に閉じ込めておくのだ?何故私を」
「それは貴方が双子だったからです」
「双子・・・・・・」
これが何なのかはわかった。双子についても書で知っているのだった。
「双子というと」
「今お世継ぎは貴方の兄君です」
ダイダロスは彼がわかっているという前提で話をした。そして実際に彼もわかっていた。
「貴方様の」
「そして私はここに」
「この国では双子は忌み嫌われます」
「呪われた存在としてだな」
「その通りです」
このことまでわかっている彼であった。書でだけとはいえやはりこのこともわかっているのだった。彼は決して愚かではない、むしろ賢明であると言えた。
「ですから。貴方様はここに」
「そういうことだったのか」
全てはわかった。納得できるできないは別にして。
「だからか。私は」
「左様です。ですからここに幽閉されているのです」
「化け物として」
「そう世間に話しておいた方が都合がいいので」
これはよくある話であった。世間にはそう話して納得するものだ。だからこそ化け物という存在が広く知られるようにもなったのである。
「ですから」
「そうか。だからか」
「おわかりになられましたね」
「私は。いてはならないのか」
言葉には感情はなかった。
「この世には。いては」
「それは違います」
「違う!?」
「確かに陛下はそう考えられています」
このことはあらためて彼に告げるダイダロスだった。
「そのように」
「では。やはり」
「ですがそう考えておられるのは陛下だけです」
「父上だけか」
「そうです。陛下だけです」
王だけしか考えていない、このことを強調するのだった。
「陛下だけなのです」
「では他の者はどうなのだ?」
「少なくとも私はそう考えてはいません」
ダイダロスの言葉が強くなった。
「私は」
「そなたはか」
「そうです。ですからミノタウロス様」
「ミノタウロス!?」
彼がはじめて聞く言葉であった。それは。
「何だその言葉は」
「貴方様の御名前です」
こう彼に告げたのだった。
「ミノタウロスという御名前なのです」
「私は。ミノタウロスだったのか」
「はい」
今度は彼に対して頷いてみせた。
「それが。貴方の御名前なのです」
「ミノタウロス」
己の名前を呟いたのだった。
「これが私の名前か」
「そうです。貴方の御名前です」
「いい名前だな」
実際に自分で口でしてみて気に入ったのだった。
「この名前は」
「そうです。これが貴方の誇りとなります」
「誇りか」
「確かに貴方は今まではお一人でした」
ダイダロスは彼のこれまでのことも話した。確かにその通りであった。
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