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大きな古時計
第三章
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第三章

「俺は別に」
「お兄ちゃんはいいのね」
「何せ腕時計を含めて四つも持ってるしな」
 笑って述べた言葉だった。
「携帯電話も時計に使えるしな、今じゃ」
「それじゃあお兄ちゃんは」
「俺はそれでいいよ」
 にこりと笑って妹に言葉を返したのだった。
「御前に賛成するよ」
「そうなの。それじゃあ」
「そうだな。わしもだ」
 今度は彼女の父である孫息子が賛成したのだった。
「わしもそれでいい」
「いいのね」
「わしも時計はかなり持っている」
 自分の息子と同じ理由を出してみせた。
「苦労はしていない。それなら」
「いいのね」
「ああ。それにだ」
 そのうえで言葉を付け加えてみせた。
「この時計は動かなくてもいいものだな」
「そうね。飾りにいいわ」
 彼の妻がそれに賛成した。
「ここに置くだけでも。例え動かなくても」
「じゃあ御前もそれでいいんだな」
「ええ。私は最初から反対していなかったし」
 時計を見つつ微笑んでいた。
「それでいいわ」
「そうか」
「よく考えたら」
 続いて口を開いたのは老女だった。
「お義父さんの形見ね。これは」
「そうだ」
 彼の夫である老人が彼女の言葉に頷いた。彼女の横で。
「その通りだ。それはな」
「形見ね。それじゃあ」
「どうするんだ?」
「やっぱり。置いておきましょう」
 遂に彼女もその意見になった。
「今は。ここにずっと」
「ずっとか」
「お義父さんだから。私にも凄く優しく温かくしてくれたお義父さん」
「そうか。御前にもだったな」
「とても優しかったわ」
 感慨に満ちた言葉であった。
「嫁の私にも。だから」
「だから置いていたくなったのか」
「それは駄目かしら」
「いや」
 彼は自分の妻のその言葉を否定しなかった。むしろ皇帝さえしてみせた。
「いいと思う。わしもな」
「それじゃあやっぱり」
「置いておこう」
 遂に彼も言ったのだった。
「この時計はな。ずっと」
「そうね。ずっと」
「この家に置く」
 正式に決まったようなものだった。
「ずっとな。この家にな」
「そうね。ひいお爺ちゃんはいなくなったけれど」
「もう一つのひい爺ちゃんはな」
「ずっとこのままだ」
 二人の孫に対して答えたのだった。
「この家にずっといるよ。ずっと」
「ずっとね」
「そう、ずっと」
 言葉が繰り返された。まるで時計の針が動くかの様に。
「一緒だよ。わし等とな」
「ずっとずっと」
「何時までも」
 また言葉が繰り返される。
「ひいお爺ちゃんはもういないけれど」
「俺達と一緒に」
「ずっとこの家にいるよ」
 皆でもう動かなくなった時計を見ているのだった。その時計は確かに動かないがそれでも彼等と共にあ
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