一話
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。
「問題は……無さそうだな」
炎上する水上基地を見ながら、舞鶴の提督はそう呟いた。通常魚雷は艦艇を狙うために用いられるが、今回は敵の基地の性質上魚雷でも有効に被害を与えられると提督は判断した。
そしてそんな提督に、どこからともなく呆れたような声がかかった。
「まったく……他の提督がこの艦隊の編成を聞いたら呆れかえるぞ」
睦月型駆逐艦、長月の声だった。
「そうか?戦艦で突破出来ないなら駆逐艦で行こうというのが当然じゃないか」
「いや、その発想は普通じゃないですから」
また、どこからともなく声が聞こえた。三日月だった。
今回、彼が沖ノ島海域を攻略するためにつくった艦隊は、睦月、如月、皐月、三日月、長月、菊月、という聞く人が聞けば耳を疑うような編成だった。今挙げた艦、全て睦月型と呼ばれる駆逐艦なのだが、困った事に旧式なのだ。最新型の陽炎型と比べるとどうしても差が浮き彫りになる。ましてや、沖ノ島の攻略に連れて行くこと自体論外なのだ。
だが、彼はやった。少数の駆逐艦でオリョールを経由して背後から奇襲をかけるとい戦法を実行したのだ。
「沖ノ島の敵はそもそもがおかしかった。オリョールからの補給は確実ではない上に、南方海域からの資源も恐らく多くは無い。普通、水雷戦隊を主軸にしないと戦線を維持できない……にもかかわらず、敵はあれだけの大艦隊を運用できていた」
唐突に彼は喋り始めた。そんな提督に、どこか渋い口調で長月が応えた。
「何の話だ?それは今しなければならない重要な話か?」
「タネ明かしだ。どうしてこんな作戦が成功したのかっていう……聞きたくないのか?」
「うっ……いや、しかし今は戦闘中……」
「話してくれ、司令官」
そのとき、今まで黙っていた菊月が口を開いた。口調は冷静を保っているが、実際は提督の話が聞きたくてうずうずしているのが丸わかりだった。しかし、それは長月も同じこと。
「オーケー。じゃ、続きだ。沖ノ島の敵は常に資源を補給出来てはいなかった。裏を返すと、奴らは常に効率的な艦隊運用を強いられていた……ここまで言えば解るな?敵はどのタイミングでどんな艦隊を編成し、運用すればいいかを事前に知ることが出来たと解すべきだ」
「じゃあ、つまりこういうことか。深海棲艦側は私達の情報を事前に全部知ることが出来たというのか?」
「恐らくな。俺も何回か出撃して解ったことだが、こちらが戦艦を入れたらあちらも戦艦を入れる。逆に駆逐艦のみなら重巡で対応していた……いくら何でも対応が完璧過ぎる。ほぼ間違い無く、こちらの手の内は殆ど読まれていたはずだ。方法はさっぱりだが」
しかし。そう言った瞬間、遂に敵の基地が大爆発を起こした。どうやら、弾薬庫に火が回ったようだった。
「しかし、だ。それだけの優れた情報収集力があり、しかも負け知らず。そうなると
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