一話
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ヶ月後……
南西諸島海域を攻略するうえで一番の難所、沖ノ島海域。その最深部に彼等はいた。深海棲艦だ。空母ヲ級が十数隻、戦艦ル級が十隻前後。その他軽巡及び駆逐艦が多数、と。沖ノ島にいる深海棲艦の本拠地は常にこれだけの戦力が確保されていた。海上に浮上基地を作り、常に警戒網を敷いていた。彼らの警戒態勢はまさに鉄壁だった。敵の鎮守府から艦隊が出撃されると直ぐに戦闘態勢をとり、沖ノ島に進撃しようものなら直ぐに主力部隊が敵を叩きに向かった。沖ノ島の深海棲艦にとって、海戦とは敵を自分達の好きなタイミングで叩ける、謂わばモグラたたきのようなものだった。つまり狩り。獲物を逃がすことはあっても、噛みつかれることはない。その程度のものだった。例え、戦艦がこようと駆逐艦をデコイに弾薬を使わせ、その後叩く。どんな敵も脅威にはなり得なかった。
だから、その日初めて彼等は経験した。真の恐怖を。
その日は晴れで、海の先まで見えそうな快晴だった。
「ン……疲レタ……」
その日の哨戒任務を終えると、空母ヲ級を旗艦とする艦隊は水上基地に帰還した。そこは正に深海棲艦の巣で、見るものを震え上がらせるような場所だった。無尽蔵な駆逐艦、軽巡。そして、練度の高い大型艦。
彼等を見ながらヲ級は改めて思った。ここは絶対に大丈夫だと。なにがあっても敗れることはないと。そう思った矢先、
突如基地が爆発した。
「キイイイ!?」
「ガアアアア!」
立て続けに起きた爆発に巻き込まれて、人型をとっていた何十隻もの仲間が吹き飛んだ。
「敵シュウ……!」
馬鹿な、さっき哨戒任務をやったばかりだ。何で奇襲を受ける?
しかし、ヲ級の疑問をよそに基地には爆発が起こり続けた。
「チ……!被害ハ!」
「駆逐艦ガ殆ドヤラレタ!戦艦モ半分以上動カセナイ!」
「糞!一体何処カラ……」
そこでヲ級はハッと気が付いた。爆発があった場所が基地の南東側、つまり警戒網が実質敷かれていない場所だと言うことに。まさかと思い、ヲ級はその方向に偵察機を飛ばしてみた。
「嘘…!?」
敵はいた。すぐ近くに。ここから一キロも離れていない場所に、敵はいた。
「数ハ……ロク!?ソレモ全部駆逐艦!?」
「ハア!?」
彼等は困惑した。これまでここの攻略には必ずと言って良いほどに大型艦が投入され、しかも三十隻以上の艦娘が動員されていた。ところが今回の敵は全く逆の艦隊を編成していた。少数、しかも全て駆逐艦。
兎に角その事を伝えて皆を落ち着かせよう、そう思った矢先、ヲ級の体は魚雷の炎に焼かれて消えた。
「敵はまだ此方の戦力を把握出来てない。撃ちまくれ」
爆音で震える海に、男の声が静かに渡った。
「任務了解……」
「任せてよ、司令官!」
「分かりました!」
そして、その声に応えるように駆逐艦達が酸素魚雷を放った
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