第一章
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第一章
大きな古時計
「もう動かないね」
「そうだね」
古い大きな家の白い壁にかけられているのはその家に相応しい大きな古時計だった。それが壁にかけられていたのだった。
この時計の前に家族が集まっている。老女もいれば青年もいる。だが銘々でこの時計を見ているのは同じだった。それだけは同じだった。
「百年ものだからね」
「百年か」
「そう、百年だよ」
口にパイプを咥えている初老の男が感慨を込めて言うのだった。
「お爺さんが産まれた時に家に来た時計だからね」
「お爺さんっていうと」
少女がそれを聞いて声をあげた。
「ひいお爺ちゃんのことね」
「ああ、御前にはそうなるな」
初老の男は少女のその言葉を聞いて納得した顔で頷くのだった。
「わしにはお爺ちゃんでな」
「そうよ。ひいお爺ちゃんが産まれた時の時計なのね」
「産まれた朝に来たらしいわね」
今度口を開いたのは老女だった。
「そうなのよね、お爺ちゃん」
「ああ、そうさ」
老女の横にいる老人が彼女の言葉に頷いた。彼の頭はもう髪の毛が殆どなくそれが彼の老齢を何よりも見せていた。
「親父はいつもそう言っていたよ。この時計はわしなんだって」
「お義父さんのね」
「ああ、その通りだ」
笑顔でまた語ったのだった。
「産まれた朝に誕生のプレゼントで家に届けられて」
「そうなの」
「それからずっと」
老人の言葉にさらに感慨が篭る。
「一緒だったんだよ。ずっとね」
「けれどもうひい爺ちゃんはさ」
青年が言う。
「いないんだよな」
「お兄ちゃん」
先程の少女が今の青年の言葉に顔を少し悲しくさせてしまった。
「それを言ってもひいお爺ちゃんは」
「わかってるさ。それはさ」
青年は顔を暗くさせて妹に言葉を返した。
「ひい爺ちゃんはもういないさ」
「そうよ。もういないのよ」
「思えばね」
中年の女が目を細めさせていた。
「お爺ちゃん、いい人生だったわよね」
「そうだね」
彼女の横にいる少年がその言葉に頷いた。
「僕の名前はひいお爺ちゃんがつけてくれたんだよね」
「ええ、そうよ」
中年の女性は少年の言葉に頷いて答えたのだった。
「皆の名前をね。つけてくれたのよ」
「そうだったの」
「ええ、皆のね」
それをまた言うのだった。
「つけてくれたわ。皆の」
「ひいお爺ちゃんは皆の為に」
「名前をつけてくれて働いて」
彼女の言葉にさらに想いが込められる。
「平和に幸せに生きてくれていたわ」
「お婆ちゃんが死んだ時に言っていたな」
孫息子の言葉だ。その初老のパイプの男の。
「お婆ちゃんと結婚した時にも時計は動いていたって」
「戦争前だったわね」
「ああ、も
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