星竜の巫女
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
意味を失う。我らの手によって」
「何だと?」
エルザの眉がピクリと上がる。
ムサシの表情は変わらない。
笑みを浮かべる訳でもなく、眉を顰める訳でもなく。
「もう1度聞く。貴様等の目的はなんだ」
「知らん」
「は?」
エルザの問いに、ムサシは簡単に答えた。
思わぬ答えにエルザは訝しげな表情になる。
「オレ達・・・いや、正確にはルナとマスターを抜いた災厄の道化のメンバーは、今回の件に関して何も知らない。ティア嬢が今日で死ぬ、それだけは聞かされているが」
「そんな・・・それではお前は、どういう内容かも知らずに私達と戦っているのか!?」
「オレだけじゃない。遊撃部隊の3人も、殺害担当も皆そうだ。まぁ、殲滅担当のアイツは理由が何であれ、殲滅命令さえ与えておけば満足なんだろうけど」
知らないのが当然であるように、ムサシは語る。
それに対しエルザは目を見開いた。
つまり、ムサシ達に妖精の尻尾と敵対する理由は、ない。
敵対する理由もない存在と戦っている。
「血塗れの欲望の方々は全員知ってるけど・・・それは、シャロン様がオレ達に正しい情報を与えている場合に限る」
「正しい情報?・・・シャロンは、お前達さえも騙すのか!?」
「よくある事だ。あの人は自分の得になる事は喋るけど、損になる事は何も言わない。教える事で自分が損をすると考えれば、味方だって平気で騙す」
確かに、そんな感じだった。
1度ギルドで会っただけだったが、エルザはそう断言出来る。
魔物だろうと盗賊だろうと魔法教団だろうと闇ギルドまるまる1つだろうと、そこそこ強い闇ギルドが3つ束になって襲い掛かってきたって平然と全員まとめて裁いてしまうティアが、あれほどの怯えを見せる相手だ。
しかもティアといえば、どれだけ目上の人相手でも毒を吐く超曲者。なのに敬語で喋り、声も硬い。
だとすればティアが怯えるほどの(言い方は悪いが)暴君なのだろう、とエルザは考えていた。
「お前はそれでいいのか?」
「何がだ?」
「与えられた情報が正しいのかどうかさえ解らない。平気で味方に嘘をつく女の下にいて、後悔していないのか?」
「当たり前だろう。後悔しているなら、とっくに自首でもしている」
くくっ、と小さい笑い声が零れる。
「オレから言わせてもらえば、お前達の方が苦しそうだ」
「何?」
「お前達は今みたいに、仲間の危機には必ず現れる。それがたとえ災厄を撒く道化師や、血に塗れた欲望を持つ者がいる場所でも」
村正を構える。
目隠しの下のムサシの目は、どこを向いているのだろうか。
それは解らないが、顔はエルザの方を向いている。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ