入り混じるは想いか欲か
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二度に渡る曹操軍との戦闘は、密盟相手とはいえどちらも手を抜くことなど無く、まさしく殺し合いだった。
私が相対したのは夏候惇。さすがは曹操の武の右腕であるだけに、二回とも一騎討ちの結果は引き分け。
張コウが戦っていたのは張遼だった。やはり張コウは強かったらしい。連合では上手く力を抑えていて、呂布相手の多人数戦闘だったから前は正確に読み取れなかったが、張遼と対等に渡り合えるまでとは思っても見なかったが。
ただ、アレの戦い方は私達のような合数の打ち合いでは無い。厭らしく、敵の動きを縛ろうと仕掛ける罠だらけ。卑怯とは言うまい。それも戦い方の一つだろう。
祭の相手は楽進と許緒。二人相手に遣り切り……しかも帰ってきても楽しそうに豪快な笑い声を上げていた様には恐れ入った。
しかし、やはりこの機を狙っていただけあって戦線はこちら側が圧されていた。
自分達の兵は大きく減る事無く、曹操との密盟の具合が不安にはなったが、後は救出の報告さえあれば滞りなく反旗を翻せる。
ただ、問題が一つあった。
途中から参入してきた鳳統の率いる部隊のみ、余りに異質過ぎた。
乱れの無い統率、的確な弱所対応、変幻自在の幾手もの形態変化には、対応に当たっていた田豊や冥琳でさえ戦慄し難しい顔をしていたのだ。
「アレはお前か祭殿並の将が居なければ突き破れんし抑え切れん。まだ守勢しかしていないようだからいいが、攻勢に移られると並の兵では……いや、手塩に掛けた兵であっても甚大な被害が出る。鳳統の思うがままに手足のように動き、命を投げ捨てるも躊躇わんから、袁家は言わずもがな、我らの兵でさえ相応の被害を受けるだけで無く士気も格段に下がるだろう」
たった一度の応対で見極めた冥琳の言は、鋭く研ぎ澄まされていたが、その裏に僅かな憧憬を含んでいた。軍師として、本物の手足のように動かせるその部隊を使ってみたい……と言った所。
田豊とは会話をしていないので何も判断出来なかったが、郭図だけがその部隊からの被害報告に苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
情報は入っている。
アレがきっと徐晃隊。二万の袁紹軍を二千余りの数で壊滅させた化け物部隊の本当の姿というわけだ。アレで一番精強な部隊で無いというのだから恐れ入る。
三度ほど袁紹軍はアレの部隊らしきモノに攻撃を受けたらしい。その時は荀ケと郭嘉が使っていて手を焼いたらしいのだが、今回程の隙の無さでは無かったとのこと。
それは鳳統が頭に据えられただけで、部隊の質がガラリと変わったということに他ならない。一体アレに徐晃が加わるとどんな化け物になるのか。
そこまで考えて、無性に血が疼くのと同時に、心にイライラが湧きあがる。
現在は軍議の為に集まっているので、徐晃と鳳統の二人を手に入れた同盟相手への舌打ちを堪えた。
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