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乱世の確率事象改変
入り混じるは想いか欲か
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大きくため息を落とした。郭図の目も鋭く細められる。それによって、張勲が慌てて話し出した。

「そ、それでは戦ボケしてダメダメな孫策さんも聞いてくれるようですから、軍議を続けますねぇ」

 厭味ったらしい言い方が鼻に着くがいつもの事だからもう気にならない。

「現在曹操軍は陽動を行いつつ部隊を散開させて各所拠点の奪取を計っていたわけですが、敵領の内部に黒山賊が攻め入り、同時に劉表さんの所の黄祖という人も攻めてくれたらしいので、曹操軍は救援の為に数を減らしての膠着状態となりましたぁ♪」

 女狐の唇から零れた一つの名前に、私の頭が茹る。冥琳もその瞳を一層鋭く凍らせた。
 黄祖……先代の虎を不意打ちで討ち取った仇敵。孫呉の地を掠め取った袁術を殺してから、絶対に私の手で殺そうと思っていた一番の敵。

――私達は今、母さまの仇と共闘させられているのかっ

 田豊、郭図の二人が私達に向けてにやりと笑った。
 自分の親の仇と一緒に戦っている気分はどうだ、何か企みがあるのなら怒りと共に吐き出してしまえ……人質を直ぐにでも殺してやるから。そう言うように。
 ギシリと拳が軋む。自然と唇が噛みしめられた。燃え上がる怨嗟は心を燃やす。されども……最後だからと全てを内に呑み込んで、脳髄に自己暗示の冷や水を浴びせ掛けた。
 袁家は劉表側とも繋がっていたのだ。
 盲点だった……そういうように、冥琳が瞼を落としていた。
 劉表が連合に参加しなかったのは袁家を嫌ってだと思っていた。如何に三公を輩出した家柄だとて、劉の血筋にまで言う事を聞かせられなかった為に、互いが険悪な関係に陥っているのだと、私達に攻めさせたのもあって勘違いしていた。
 劉表は、私達では無く曹操を先に滅ぼしたい……例え自分が見下している袁家に利用されようとも。そういうこと……ではない。
 きっとあの古き龍は、大局のみを見据えている。
 私達も曹操も袁家も、全てを弱らせる為にその提案に乗ったのだろう。私達は言わずもがな、対袁本家との大戦を行うであろう曹操も、勝った後には増えた領地と戦後処理で時間と資金、人手が取られる。
 情報通りに劉備が劉璋の所に向かったのならば、ほぼ無傷で残るのは西涼の雄にして漢の忠臣である馬騰と、劉の血筋が濃い劉表のみ。
 一番得をするのは間違いなく劉表だ。

――あいつはただ待ってるだけでいい。じっくりと待って、熟した果実に齧り付く気だなんて……

 まるで掌で踊らされていたかのよう。
 曹操も、私も、劉備も、袁家も……大陸の全てが思う通りに動かされているように思えた。
 呂布はまだ、私達の前に姿を現していない。曹操の所にもまだ出していないだろう。あの化け物は持っているだけで手数が増やせるのだから。そして……もしかしたら袁家側はそれさえ織り込み済
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