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乱世の確率事象改変
入り混じるは想いか欲か
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 曹操は提案してきた事態を、確かに起こしてくれた。
 両袁家の討伐の為に劉備軍を餌にし、反旗を翻した時は何も手は出さない、と持ちかけてきていたのだが……こちらとしては悪い事に、あまりに時機が早すぎた。
 本来なら、劉備軍が居残った状態でこちらにも交渉の余地が残され、徐晃を手に入れるいい機会となったはずだった。
 しかし曹操は明かしていない情報から、袁紹軍が行動を起こす時機を早めるに至り、あちらにとっては全て予定通りの収穫を得たわけだ。
 もう一つの展開では、劉備軍が助けを求め、それを知った袁紹軍が曹操に攻め入って掛かりっきりになるとの予測も立てられていたが、そんなモノは初めから有り得なかった。
 元からあの女は徐晃も、徐州も、名声も、そして先の有利も、全てを持って行く気でいたのだ。
 気付けなかった私達が悪い。それでも、苛立ってしまう心は抑えられない。

――ホンット、喰えない相手ね。こっちの利は袁術からの脱却だけなんて……借りの対価としては相応だけど、手の内をある程度見せるなんていうこっちの被害有りきの余分な利子なんかいらないわよ。

 まだ続く乱世に於いて、敵の情報は宝となる。
 軍師や将の指揮の癖や、鳳統が率いる徐晃隊がどれほどの脅威なのか隠さずにわざわざ見せてきたのはその為だろう。
 しかし……徐晃がいなければ、本物の黒麒麟部隊を見せて貰わなければそれも少々不足に感じる。
 ふと、曹操がここでその力を確かめないという事態に違和感を覚えた。

――ああ、そうか。徐晃に何かあったのか。徐州の攻略に於いて徐晃が持つ大徳の名声は莫大な利を齎せるはず。それを使わないという事は……二万の兵を抜けて無傷では無かったという事か。それに徐晃は劉備に妄信しておらず、忠誠さえ誓ってなかったようだから、曹操と徐晃どちらもの思惑が外れて絶望に堕ちた……否、堕とされたのか。

 思い至れば早い。
 黄巾の時点で、少し話しただけでアレの本質に疑問を持ち、調べるうちに見抜けていた。
 劉備と相反する覇の求道者。内部で自分の願いを『叶えさせる』為に動き乱世を喰らう大嘘つき。
 蓮華には、出来るならアレから影響を受けて欲しかった。優秀な種はあくまでそのついでだ。
 甘い理想に絆されず、現実的にどうしたら願いを叶える事が出来るかを貫ける存在は異質。きっと手に入れたなら影響を受けて、蓮華も私や冥琳のように外への思考を持てただろう。
 それはもう叶わない願い。私から蓮華に言い聞かせるしかなくなった。
 身内からの言葉はどうしても現実感が薄い。私や冥琳、祭から言っても、母さまの幻影をそこに見てわだかまりが出てしまう為に、出来るなら全く孫呉に関係の無い他者から影響を受けて欲しかったのだが。

――劉備軍との戦闘でいいように成長してくれてたらいい
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