さん。
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は不思議な声を洩らした。さっきからちょいちょいこの声を聴くんだけど、妙に可愛らしくてクセになりそう。
「ま、そうは言っても私も舐められたりバカにされたいワケでもないのよ。できるなら信頼とか尊敬とかされてみたくはある。というワケで、本格的に見下されない内にそろそろ仕事のお話でもしよーか」
「それを口に出しちゃう時点でどうかと思いますが……では質問がありましたらどうぞ。答えられる範囲でお答えします」
「ありがとう電ちゃん」
少し落ち着いたのか、カップを口にする電ちゃんを眺める。さて、まずは何から質問しようか。色々と聞きたい事や分からない事はある。むしろここにきて噴水のように湧き出てきている。……しかしまぁ、ここは、これだけは軽いジャブとしてやっておかねばなるまい。
「じゃあ最初の質問だ」
「どうぞ」
「電ちゃんの3サイズを教えてください」
「久々にキレちまったのです。屋上」
せっかく綺麗に掃除した床に中身ごとカップを放り投げる電ちゃん。軽く手を振ったようにしか見えなかったのに粉微塵に砕け散っている。やべえ、チビりそう。さすがに命の危険が危なそう。
と───
「なんだぁ?」
「……チッ。命拾いしましたね司令官さん」
鎮守府内全域に響き渡るような、聞き覚えのありすぎる大音量のブザー音が鳴りだした。低く鈍く伸びるこの音は、訓練兵時代、毎日のように聴かされた『危機』を報せる警報音───!
どうやらよくある事のようで、電ちゃんに慌てた様子はない。颯爽と司令官室を飛び出していく。……ってちょっと待て。
「ど、どこ行くんだい電ちゃん」
「どこって、そんなの出撃に決まってるのです」
「私! 司令官! 提督! 説明!」
「なんでカタコトですか。貴重な説明タイムを棒に振った己の愚かさを恨むがいいのです。……というかそうですね。一緒に来てもらった方が手っ取り早くていいのです。時間もない事ですしね」
「一緒にってどこに───ぐえっ」
「時間ないんですってば」
「ぐええぇ〜〜!?」
さっきの高速移動の要領で接近されて服の襟を引っ掴まれ、勢いよく廊下に投げ倒された。そのままずるずると、信じられない速度で引きずられていく。彼女と私の身長差を考えるにそれが一番簡単な運び方なんだろうけど、いくらなんでもこれはですね、ヒドすぎるんじゃないかと……!
「死ぬっ、これ死んじゃうよ電ちゃんっ!」
「そこらへんは根性でどうにかしてください」
「あ、後で絶対デコピンだからね電ちゃぁぁあん!」
私の絶叫が警告音を打ち負かした。
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