悪魔の島編
EP.15 覚悟
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込まれ、槍の石突で鳩尾を突かれ悶絶したところだった。
長い得物を持つエルザに対し、極至近距離で戦おうとした敵の魔導士の判断は正しかったが、それは彼女の罠。長い槍という取り回しの悪い得物をこれ見よがしに振って敵に印象付け接近を誘い、まんまと飛び込んできた敵に対し逆に飛び込むことで意表を突いたのだ。
「流石だな。……さて、まだやるかい? 頼みの綱はもう切れてるぞ」
舞うように、妖精女王の名に恥じぬ動きで敵を仕留めてみせたエルザに賞賛を贈ると、ワタルは襲撃者たちの首領格に向き直った。
この世界では魔法を使えるものと使えない者の戦闘力の差はとても大きい。傭兵ギルドやトレジャーハンターギルドなど、武力を持つ集団は存在するが、一番強力なのは魔導士ギルドだ。
魔導士の絶対数が世界の1割と少ないにもかかわらず、王国軍に魔法部隊があり、評議会の一番の悩みの種となっているのが魔導士の闇ギルドであることからも、魔法の強大さが分かるだろう。
敵魔導士のみを狙い、その撃破に無傷で成功した事で力の差を見せつけ、降伏を促すワタル。
味方の魔導士をあっさり倒した者たちに、魔法を使えない自分たちが敵うはずがない。
そんな心理を利用して一気に突破しようしたのだが……
「ま、待て……零帝様の邪魔は、させん……」
呻き声と共に武器を頼りなく構える老婆が1人。
だが、戦闘中に覆面がはがれて露わになったその目は爛々と輝き、並々ならぬ感情を秘めていた。
老婆の声に触発されたのか、ワタル達の力を目の当たりにして戦意を失いつつあった者たちも各々に武器を構え直す。
「(こいつら……)」
そんな彼らを見て、ワタルは眉を潜め、注意深く観察する。
一度折れた心を持ち直すのは簡単な事ではない。ましてや、見た限り彼らは戦いに関しては素人だ。
そんな彼らが、一度降伏しそうになった心を奮い立たせ、再び立ちふさがる。
それは何故か。彼らの目の中にある感情は何なのか。何が彼らをそうさせるのか。
時間が無い事よりも、その興味が勝ったワタルはそんな事に頭を回しながら、視界に入ったある物を見る。それが何なのか、思い出したのと同時に、同じ事に気付いたエルザが口を開いた。
「その髪飾り……貴様ら、ブラーゴの民か」
「ブラーゴ? ブラーゴって確か……」
老婆の特徴的な髪飾りを民族衣装としていた北の地方の名前は、ルーシィにも聞き覚えのあるものだった。
デリオラが最後に暴れ、最期はウルに封印された町。グレイの話にも出てきた街の名前だ。
「なるほど……訳有りか?」
「ぐ……ああ。私たちは――――」
ワタルに指摘された老婆は顔を歪めると、自分たちの事情について話し始めた
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