悪魔の島編
EP.15 覚悟
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
周りが新入りに対して否定的なら、先輩である自分が親身になってやろう』
彼らが入るまで、ギルドで一番の新米だった当時のグレイは先輩風を吹かせようと、そんな事を考えたのだ。
それに、腹が立ったという事もあった。
周囲の否定的な視線を受けてなお、ワタルの表情に苦痛と言った感情は見られず、それを受け入れる諦観のようなものすら感じられた。
否定されて当たり前だと言わんばかりの、ワタルの冷めた雰囲気を感じたグレイは苛立った。
『どんな事情があるのか知らないが、妖精の尻尾を嘗めるな』
一度受け入れた『仲間』を簡単に否定するほど、このギルドは薄情でも弱くも無い。
そんな思いを胸に、ギルドの奥でマカロフに何か言われたのか、幾らかマシと言える顔つきになった――それでもまだ陰りがある雰囲気の――ワタルに勝負を挑んだのだ。
それを言葉にして伝えられるほど器用な性格ではなかったし、単純に新入りの力量に興味があった、という理由もあった事は否定しない。男子の性というヤツだ
まあ、結果は手加減され、ボロ負けもいいとこだった訳だが。
それでも、模擬戦で自分の力を示したワタルはギルド内で孤立することなく、嘗ての自分がそうであったように、時間と共にギルドのメンバーとして馴染んでいったワタルを見て、立ち上がった甲斐があったものだと、ホッとした。
当然、彼らの1年後に入ったナツ程オープンではないものの、いつか彼らを超えてやろうという思いは、しっかりとグレイの胸に燃えている。負けっぱなしは気に食わないのもまた、男子の性だろう。
「(でもその前に……)止められるのはオレしか居ないしな」
過去に思いを馳せるのを打ち切り、グレイは見知った魔力のぶつかり合いをすぐそばまで感じられるところで足を止めた。
リオンの魔法であろう氷に遮られていても、グレイははっきりとナツとリオンの魔力を感じ取り、氷に手を当てて自分の魔力を侵食させた。
「(悪いな、ワタル。戻るって約束……守れないかもな)」
それでも、自分とずっと競い合ってきたライバルである桜色の髪の少年であろうと、これだけは他人に譲る訳にはいかない。
グレイの魔力がリオンの氷に干渉して、流し込んだ箇所からピキピキと音を立てて亀裂が入る。
これはグレイの清算すべき罪であり、果たさなければならない責任であり、決めた覚悟であった。
亀裂はどんどん大きくなり、壁を挟んで反対側のナツとリオンは戦いの手を止め、何事かと亀裂に目を向ける。
そして……
パリィン!!
大きな音と共に氷が砕け、グレイはナツ、そしてリオンと再び相対した。
「ナツ……コイツとのケジメはオレにつけさせてくれ」
「……
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ