悪魔の島編
EP.15 覚悟
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「しかし、ウルか……」
先に島民の宿営地を出たグレイに追いついた一行が遺跡を目指して走る中、最初に口を開いたのはワタルだった。
口にしたのは目下の問題である、封印された悪魔・デリオラや、その封印を解こうとしているグレイの兄弟子・リオンではなく、彼らの師・ウル。
既知の相手かのように師の名を口にしたワタルに、当然グレイは疑問を抱き、走りながら彼を問いただす。
「ウルを知ってるのか、ワタル?」
「知り合いって訳でも、大して知ってる訳でもないけどな」
昔の事だから思い出すのに時間が掛かっちまったが、と続け、ワタルは眉間に皺を寄せながら、ゆっくりと口を開いた。
「確か……十年近く前、北の大陸で見たある雑誌に、聖十大魔導候補として名前が挙がってた記憶がある」
「聖十大魔導だって!?」
「聖十って……なに?」
妖精の尻尾に入る前なのはもちろん、エルザと出会う前の旅で見た記事。普通なら忘却の彼方に追いやられているが、ある単語がワタルの記憶にその記事の存在を留まらせていた。
その単語……『聖十』にハッピーが驚き、ルーシィは疑問を口にする。
それに答えたのはハッピーだ。
「ルーシィ知らないの?聖十大魔導っていうのは、大陸で最も優れた魔導士十人に送られる称号の事だよ!」
「へぇー、凄いのね、ウルって人……」
「ヘッ……」
「(聖十、か……)」
感嘆したルーシィの声に、決戦を前に険しい顔をしていたグレイも顔を僅かに和らげる。師を褒められて悪い気はしないのだろう。
一方でエルザは聖十の話題に、一見しただけでは分からないほどではあるが顔を顰める。
そんな彼女の様子を横目で見ながらワタルは話を続けた。
「(ジークレインの事でも考えてんのかね。まあ、奴の事も気になるが……)重要なのはそこじゃない。その記事の最後には、ウルは……確か、ブラーゴという地方で失踪したとあったんだが……なるほど、絶対氷結、か」
「ああ――」
絶対氷結。
いかなる爆炎もその融解を許さない、文字通り融けない氷でもって対象を封じ込める氷属性の最強魔法。その実体は、術者の肉体を永遠に氷へと変換する魔法である。それは厳密な『死』ではないとはいえ、術者の身を滅ぼす魔法と言っても過言ではない。
グレイが一行に、自らの過去と共にその説明をしている間、ワタルは別の事を考えていた。
「(デリオラ、厄災の悪魔、不死身の悪魔……なにより、候補とはいえ、聖十に抜擢されるほどの魔導士が絶対氷結を、最後の手段を使わざるを得ない程の悪魔か)」
「? どうした、ワタル?」
走りながらも、黙ってしまったワタルに違和感を最初に抱いたのはやはりと言うべきか、エルザだっ
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