EPISODE19 暴走
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相手は一年前の元凶だぞ?それなのに戦う気はないなどと戯言をほざくこの男にクリスは心底腹が立っていた。
ここは戦場、一度出逢えば互いに殺し合うしかない。そうやって命のやり取りをして、生き残る為の術を身に着けてきた。時には命を奪い、そして時には強者に縋りもした。そうやってなりたっているんだろ?この世界は。強いものが弱いものの全てを奪う。奪って奪って、奪い尽くす。それで、最後には争いのない世界が待っている。
そう、要は強ければいいのだ。そして自分のクライアント(飼い主)はそれを少なからず望んでいる。この完全聖遺物と、それに適合した自分が必要だと言ってくれた。だったら自分はその期待に応えればいい。単純明快、四の五の言わずに行動で示す。いままでそうやってきた。
なのに、こいつはアタシを狂わせる。このアタシを目の前にして笑うことすらやってのける。しかも戦いたくないと言い、挙句自分を庇って死にそうになった。
わからない。此奴がなんなのかわからない。言い知れぬ恐怖がクリスに忍び寄る。自分が自分じゃいられなくなってしまうような、そんな感覚。
でも・・・・なにか忘れているような気がするのもたしかなんだ。
わからない。もう、なにがなんだかわからない。だからこそ腹が立つ。
「なんなんだよ・・・・なんなんだよ、テメーはよォ!?」
クリスの猛攻がより一層激しくなる。
「なんでそんなに笑ってられるんだよ!?なんでそんなに平気でいられるんだよ!?アタシとテメーは敵同士、命の奪い合いをしてる真っ最中なんだ。なのに・・・・なんでそんな気持ちで戦ってんだよォ!?」
もはや狙いなど定まっていない。ただ何かを振り払いたくて鞭を振るっているように見える。言葉から伝わる感情、そして彼女から感じる“歌”は、もう限界だということを告げているようだった。だからこそ雄樹は攻撃できない。悲しい気持ちでいるこの子に、泣いているこの心に、どうやって攻撃できようか。
そんなこと、五代雄樹が許すはずがない。
自分は戦いたいんじゃない。ただ話がしたいんだ。どうしてそんなに悲しいのか。どうしてそんなに傷ついてまで戦うのか。
だから、知りたい。この子の本当を。
「・・・・、超変身!」
赤から紫へ。正面からの一撃を身体を張って止める。強靭な装甲は傷一つつかずにあっさりとクリスの鞭を受け止め、しっかりとそれが握られている手を掴む。
「おまえに、アタシの気持ちがわかってたまるか・・・・!」
『人の気持ちになることなんてできないよ。思いやることだったら、なんとかできるけどね』
戦っているとは思えないような穏やかな声色で語りかける雄樹にまた感じる恐怖。
この男が恐いんじゃない。自分の中にある
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