EPISODE16 恩師
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機動部二課 技術研究主任 櫻井了子。
「・・・・はぁ〜、こういう報告書って作るの嫌いなのよね〜」
やっと終わった報告書をデータに保存し椅子の背もたれにだれる了子。こういうところは普通の人と変わらないなと静かに笑いながらカップに入ったコーヒーを差し出す。
「ん〜。やっぱユーちゃんのコーヒーはいいわぁ・・・・」
了子が自分のことを名前ではなくあだ名で呼んだことに今は完全プライベートモードであることを察する。
「了子お――――了子さん、いきなりあだ名で呼ばないでくださいよ。ちょっとビックリするじゃないですか」
「あらつれないわね〜、いいじゃない。ここに居る以上私とあなたは教授と助手、言ってみれば先生と生徒なのよ?フランクに普段からあだ名でよんでもいいけど、そういしたらあなた響ちゃんのいいネタねされるわよ。それでもいいなら呼ぶけど」
「前言撤回します」
ならばよろしい、とコーヒーを一口。苦いながらも豆の旨味と僅かに入った砂糖の甘味が程よく眠気と疲れを取ってくれる。仕事のひと段落したあとのお酒もいいが、了子にとってはこの一杯がなによりもお気に入りだった。それだけにこの空間は誰にも邪魔されたくないとドアには開けるなという紙まで貼ってある。
「あ、そういえばユーちゃん今日誰かと会う約束してたっけ?」
「うん。俺の中学の時の先生でさ。約束してたんだ」
ウキウキと、嬉しそうに笑う雄樹。この笑顔が癒されるなとすっかりリラックスしながら椅子をクルリと反転させて脚を組む。
「へ〜、二人だけの同窓会ってやつ?はたまた禁断の恋!?おばさん保護者としてそんなこと許しません!――――って誰がおばさんよ!!」
「自分で言ったのに怒られた…」
わざわざ言うのやめたのに自分で妄想にひたって挙句でた事なのに怒られるとは理不尽なことこの上ない。やはりこの人、普通とはどこか違う気がする。
「で、どこで会うの?」
「通ってた学校。廃校になるから、最後の想い出にってことでさ」
「ああ、あの学校?」
「そ。・・・・先生、元気にしてるかな・・・・」
「・・・・ユーちゃんの先生って、名前なんだっけ?たしか…ほ――――」
と、言いかけて雄樹の携帯が鳴る。呼び出しの主をディスプレイを確認し通話を押す。
「もしもし」
《雄樹さんですか?未来です。準備できましたよ》
「うん、わかった。今からいくからいつもの公園前で」
《はい》
電話を切って上着を手に部屋をでる。「いってらっしゃい」という了子に「はい」とサムズアップで返し出て行く。
空は晴天。今日はいいことがありそうだと雄樹は地上に出た。
♪
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