第百七話 決戦の前にその四
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「そうするだけだ」
「左様ですか」
「これで納得してくれたか」
「はい」
加藤の考えだけでなく人となりも再確認出来た、そうした意味での返答だった。
「これで」
「ならいい、ではな」
「それではですね」
「後はだ」
それならというのだった。
「最後まで楽しませてもらう」
「それでは」
こう話してだ、そしてだった。
声は加藤のところから気配を消した、加藤は声の気配が消えてからだった。再び表の仕事である清掃に戻るのだった。
上城はその最後の戦いに向けて英気を養っていた、その日常においても。
普通に暮らしてその中でだった、彼はそうしていたのだ。
その彼にだ、樹里が傍にいていつもこう言っていた。
「あと少しだから」
「うん、今はね」
「あえて普通に暮らしてなのね」
「身体も心もね」
そのどちらもだというのだ。
「リラックスさせているんだ」
「そうなのね」
「部活も出てね」
「部活は出た方がいいわね」
「さもないと身体がなまるからね」
「ええ、だからね」
樹里も上城にそれがいいと述べる。
「部活に出ているのは正解よ」
「そうだよね」
「そう思うわ。今もね」
二人は今は昼食後の休み時間を共に過ごしている。図書館で二人で現国の課題について調べながら話しているのだ。
「こうしてね」
「普通に学校でもいて」
「そう、そうしてね」
そのうえでだというのだ。
「最後にはね」
「戦って」
「そうしてね」
「今はその時の為にあるからね」
「何もかもがね」
「戦いを終わらせないとね」
剣士の戦い、それをというのだ。
「駄目だからね」
「ええ、そうだからね」
「運動もしていいものを食べて」
「普通に暮らしてもいてね」
「そういうのがいいんだね」
「そうよ、それでだけれど」
樹里は上城にだ、こうも言った。
「今の課題のことだけれど」
「それのこともだね」
「ええと、志賀直哉だけれど」
課題はこの作家のことだった。
「この人だけれど」
「そうそう、この人ね」
「元々仙台藩の人よね」
「仙台藩の家老のね」
「そのお家の息子さんよね」
「そうだよ、だからそのままいけば」
維新を迎えなければ、というのだ。
「家老さんだったんだよ」
「そうなのね」
「だから経済的には困ってなかったみたいだよ」
「ええと、若い頃は」
樹里は今手にしている志賀直哉について書かれている本を読みながら上城に対してこんなことを言った。
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