EPISODE12 約束
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る女の子を放ってはおけない――――が、言葉が見つからない。
すると、そこに響くヴァイオリンの音。いつの間にか未来が弾いており、優しく温かい音色が教室だけでなく、静まり返った校内全体を包むかのように波紋をうむ。どこまでも透き通った素直なその音は聞いていて耳だけでなく、心にも心地いい。そういえば、二年になったら専攻するんだっけと以前聞いた話を思い起こしながら雄樹は目を閉じてしばしその音色に酔いしれる。
そんな時、ふと過去の出来事を思い出した。あれはまだ小学生の頃・・・・だっただろうか。将来はヴァイオリニストになりたいと話していた未来にどうして、と聞いたことがあった。その時未来は満面の笑顔を浮かべてその理由を話していたっけ、と思い返す。
たしか、その時の言葉が・・・・――――
「・・・・あれ、やめちゃうの?」
途中で止んだ音に雄樹は目を開ける。すると未来がなにやらふくれっ面でこちらを見ていた。
「だって雄樹さん私のヴァイオリン聴くとすぐに寝るんだもん。一度も最後まで聴いてくれたことないですよね」
これはマズイ。機嫌をそこねたようだ。相談に乗るつもりが怒らせてしまうとはなんたる不覚だろうか。
「ご、ごめん。未来ちゃんの演奏って、聴いてるとすっごく気持ちよくなるからつい・・・・」
「それ謝る気あります?」
「もちろん!」
得意のサムズアップもこれでは意味がない。もはや苦笑いするしかない雄樹に未来は淋しそうにヴァイオリンをケースにしまう。
「・・・・未来ちゃんはさ、どうしてヴァイオリンを始めたの?」
「え・・・・?」
「・・・・響ちゃんの趣味ってさ、人助けだよね。その理由はなんだかわかる?」
「たしか、人の役に立ちたいから、ですよね。あと、それで誰かが笑顔になれたらって」
う〜んと思考し幼馴染の奇行の意味を思い出す。
「うん。じゃあ、未来ちゃんがヴァイオリンを続ける理由は?」
「それは・・・・私が初めて演奏会に出たとき、家族や響が笑顔になってくれたのがうれしくって・・・・」
「そう。響ちゃんも未来ちゃんも、みんなの笑顔の為にがんばってる。・・・・ただ、場所が違うだけなんだよ。今響ちゃんは、響ちゃんの場所で頑張ってる。未来ちゃんは、未来ちゃんの場所で頑張ってる。ふたりともおんなじ理由で頑張ってて、ただ場所が違うだけなんだ」
「場所?」
うん、と頷いて雄樹は席を立つ。階段を降りて、教壇にたってさながら教師のように未来をみて笑顔でいう。
「・・・・だからさ、未来ちゃんは未来ちゃんの場所で頑張ればいいんだよ。響ちゃんが笑顔でまた頑張れるようにさ。だから、笑って。そうすれば、響ちゃんもちゃんと未来ちゃんのと
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