EPISODE9 片翼
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歩いていく”ことを選んだ、立花 響としての答え。
――――こういうの、青春っていうんだろうか。
弦十郎が予想していたものとは違った形ではあったが、それでもこれが彼女の今だせるものの全てを翼にぶつけた。
そして、そのぶつけられた翼は響に見入る。そのどこまでもまっすぐな言葉と想い、すべてがまるで――――
「・・・・は、」
瞬間、何かが切れたように翼が腹をかかえて笑いだす。驚愕する響と弦十郎をよそに翼はただただ声をあげて笑う。それはもう、咳き込むくらいに目じりに涙を浮かべて。
やがて息を整えて、顔を上げる。
「・・・・いつぶりだろうか、こんなに笑ったのは。本当におまえは私の考えとは全く逆を行く」
「えっと・・・・」
「・・・・立花」
「は、はい!」
「・・・・謝るのは私の方だ。いつの間にか、私は自分の気持ちを周りに押し付けていただけのようだ・・・・」
頭をさげる翼。それにあたふたする響の図がなんともおかしくて弦十郎はばれないよう笑う。
「…やはり、ガングニールの奏者だな。おまえは」
「・・・・?」
「・・・・だが、私としても納得がいかないこともある。いずれこの勝負はつけさせてもらうぞ?」
「・・・・はい!」
差し出された手を握る。まずは、ここから始めてみよう。この笑顔に、誇れるようになろう。
ツヴァイウィングは、もう永遠に両翼揃うことはない。片翼だけではいずれ落ちて飛べなくなる日もくるだろう。でも、そんな時でも今の自分には信じて頼る存在がこんなにもいる。見渡せば、こんなにもたくさんの。だからこそ風鳴 翼は飛ぶ。片翼になりながらも、その羽をいっぱいに広げて青空をどこまでも。今はまだ小さな雛鳥と一緒に。
「・・・・了解した。二人とも、雄樹君がノイズと交戦中だ。状況はあまりよくないらしい。それに・・・・ネフシュタンもいる」
告げられた報告に手がわずかに震える。過去の光景がフラッシュバックし、恐怖を植え付けてくる。グッと食いしばる翼をみて、響は繋いだ手をギュッと握った。
「…翼さん」
「・・・・・ああ。行こう、立花」
独りじゃない。だから飛ぼう。もう、迷いなどないように・・・・
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