EPISODE3 変身
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〜PM 17:00 テレビ局内 風鳴 翼 楽屋〜
「失礼します」
入室を問う声に承諾の意志を示すとガチャリとドアが開いて男が入室してくる。いつもの人懐っこい笑顔を浮かべて手に持った袋を掲げて「差し入れ」と一言。よくもまあここまで来れたなと半ば呆れつつ感嘆する。この男、神出鬼没にもほどあがる。アポイントメントという言葉はないのか?
まあ、声から判断して楽屋に入れてしまう自分も浅はかだが。
ともあれ、好意はうけとっておこう。
「ありがとうございます。・・・・わらびもち、ですか。私これから歌番組の収録なんですけど」
「あらら…緒川さんからこれ好きって聞いたんだけど・・・・」
彼も余分なことを・・・・とまたため息。
「いえ、大丈夫です。今日はこれで仕事も終わりますので。五代さんは?」
箱を開けて食べている。この男、まるで遠慮がないのは何故だろうか。あまり会話のなかったことから彼のことをイマイチ知らな過ぎるが多少なりともわかることがある。たとえば――――
「俺も今日は終わり。・・・・あとはちょっとパトロール、かな」
もごもごと頬張りながら翼の受け答えに応じる、なんて中身が外見と反してかなり子供っぽいということだけ。イマイチ掴みどころのない雄樹は翼にとってはかなり苦手な人間の部類だ。
「そうですか。お疲れ様です」
なんの当たり障りのない答えで会話を切る翼。早く帰ってくれという意思表示でもあったのだがまったく帰る気配はないことに若干イラっとしていると、急に雄樹が声のトーンを変えてきた。その声色からふざけた話や世間話ではなく真面目なことだと悟る。仕事の話だろうか?とりあえず黙って聞くことにする。
「・・・・翼ちゃん。俺やっぱり戦ってみるよ」
「は・・・・?」
振り向くと、そこにはあの笑顔が。それが翼の苛立ちを一瞬にして加速させる。
「またそんなことを・・・・以前にもいったはずです。ノイズと戦うのは防人としての私の使命。いくらアマダムを持つあなたでも、元はただの一般人。組織に正規に所属しているならまだしも、あなたは櫻井教諭の助手というだけです。同じことを何度も言わせないでください」
「でもそれを言ったら翼ちゃんだって“天羽々斬”を手にいれる前は普通の女の子だったでしょ?一緒だよ」
「違います。・・・・私は、防人として――――」
そこで翼は押し黙る。雄樹の笑顔を見て、なにも言えなくなってしまった。いつもなら言い伏せることなど容易いはずなのにこの笑顔を前にすると何も言えなくなるのは・・・・なぜだろうか。
――――あいつの笑顔さ、びっくりするくらいいい笑顔だろ?あれされるとなんも
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