50:フラワー
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タルを用意したもう一つの理由なんだけど……。
そんなキリトの為に、特別の想いを届けたくて……歌を、作ったんだ。
ボクをあたためてくれた、暗闇の中に居たボクを照らしてくれたキミへの……『ありがとう』の歌。
――よかったら、聞いてください。
その言葉を最後に、ユミルの澄んだ歌声がクリスタルから響き渡って来た。
「……綺麗な声」
まずリズベットが言った感想を、俺は心の中で復唱した。
「でもこの歌……少し淋しい感じだな」
いわゆる弾き語りというのか、ユミルの歌声に乗せて聞こえてくるのは主奏のピアノのみ。バラード調のその音色は淋しいニュアンスを感じるが……
あいにく音楽はさっぱりの俺の言葉に、この中でも耳の肥えていそうなアスナが、ううんと首を横に振る。
「そんなことないよ。この歌声と歌詞は……この歌は、希望に満ちている」
そう言ってアスナはそれきり、歌の没頭するように目を伏せて手を後ろに組みながら歩き始めた。
シリカもアスナの真似をし始め、ピナもリズムにあわせて目をしぱしぱさせながら上機嫌に歌を聴いていた。
「……そうか。そうだよな……」
きっと。そうに違いない。
ユミルは照らされた道の先の光を見定めた。その光へとマーブルと一緒に歩み始めたのだ。
そんなあいつの心からの歌声だ。きっと希望に満ちているに違いない。
……確かによくよく聴いていけば俺の耳にも、ユミルの温かさと強い意志が歌声に乗せられていると感じられ始めていた。
「……本当に、いい声だな……」
ユミルの希望の歌が、この神秘的な森へと響き渡り、俺達の歩く道を照らしていく。
それは、自分の道を見つけたユミルが、俺達に示してくれる導きの響きにも感じられた。
「……行こう。ユミル達の為にも、はやくこの世界を攻略しに……!」
アスナ達の返事を聞きながら、俺は強く次の歩を踏み締める。
俺達は歩む。この世界の解放へと続く道を。俺達の後ろをついてくる人達の中に、ユミルとマーブルもいる。
――その二人を含めたみんなに、恥ずかしい後ろ姿は見せられないもんな……。
俺達は進む。このアインクラッドの頂上へと続く、果てしない攻略の道を――。
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