魔人‐ファウスト‐part1/災いを呼ぶ少女
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りしかないな。覚えているのは。憐たちにもう少し聞いとけばよかったか?)
いや、後悔しても現実は変わらない。ちゃんと話でも聞かせよう。
「昔の友達から聞いた話でもしよう」
「うん!」
洗濯物を干しながら、そんな二人を遠くから見ていたテファは、温かい目で二人を見ていた。エマはまるで、シュウを兄と呼んでなつき始めている。シュウも、乗り気じゃなさそうでちゃんと相手によってうまく対応しようと考えてくれている。
でもテファ自身、時々考える。彼はここにいてはならない、故郷にいなくてはならない。召喚した身でありながら、我ながら無責任なことを考えてしまうのだ。彼の故郷にはきっと友人がいる、家族がいる。きっとみんなが彼のことを心配している。二度と帰れないと言っても過言じゃない身の彼を、村になじみ始めた彼をこの村から…。
「テファ姉ちゃん」
テファはふと、後ろから声をかけられた。シュウに対して反抗的な態度をとっていたサムだった。
「あいつ、エマと何をしてるんだ?」
「お話を聞かせてるんだって」
「…話…ねえ」
サムは、まだシュウの存在について懐疑的だった。
「まだ、シュウのこと信じてあげられない?」
「…確かにあいつは、姉ちゃんを助けてくれた。でも…」
テファは俯いてどこか悔しげに呟くサムを、優しく撫でた。この子は戦災孤児だ。どんな過去があったかは厳密にはわからないが、目の前で親を亡くしたり酷い裏切りに合ったりなど、人間不信に陥るくらいの、世界の裏を垣間見たような出来事があったに違いない。
だから疑った。シュウが実は、テファを浚ったあの盗賊たちとグルではないのかと。でも、予想は外れて彼はテファを連れ帰ってきた。大事な家族を取り戻してくれたこちには感謝している。でも、同時に悔しくもあった。自分が何もできなかったのに、平民が勝てっこないと常識として伝わっているメイジを一人であっさりと打ち倒した。果てにはどことなく出現した怪物に対しても物怖じすることなく、テファを先に危機的状況から脱出させたという事実を聞いて、自分がなんて無力なのだと思い知らされた。早い話、嫉妬の感情をサムはシュウに対して強く抱いていた。自分にも、彼のような力と精神があれば、テファ姉ちゃんを守ってあげられたのに…。
「大丈夫。シュウは、あなたの力にもなってくれるはずよ」
彼女はサムをそう言ってなだめた。
テファは信じた。シュウは、決して悪い人などではないと。そうでなければ、あの時自分を助けに来てくれるはずがないと。
でも、まだだ。まだ自分と彼は、お友達と堂々と言えるような関係とは言いにくかった。
彼は故郷からここへ呼び出した自分を恨んではいないといは言っていた。でも、故郷にいる友人や家族のことは気になっているはずだ。それなのに、彼は一言も「帰りたい」とは言わ
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