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戦国異伝
第百六十八話 横ぎりその二

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「だからじゃ、ここはじゃ」
「はい、私が向かい」
「守れ、そして武田を美濃に入れるな」
「わかりました、それでは」
 帰蝶も信長の言葉に応えて彼の前で膝をつく、こうして犬山のことも決めてだった。
 信長は十五万の大軍、諸将と共に岐阜城を出た。そのうえで三河に向かいそこから家康を救いに向かう。このことは読み通りだった。
 織田軍出陣のことはすぐに浜松にも伝わった、それで城内の誰もが沸き立った、十六将も意気上がり兵達に言った。
「織田殿が出られる、それならじゃ」
「はい、それではですな」
「我等は」
「この城に篭るぞ」92
 そうして戦うというのだ。
「それで今はな」
「守って、ですな」
「そうして」
「そうじゃ、敵を引き寄せてじゃ」
「そこを織田殿が来られて」
「この戦に勝てますな」
「そうじゃ、命を粗末にするな」
 この戦ではというのだ。
「よいな」
「はい、では」
「この戦では」
 兵達も応える、そしてだった。
 徳川軍は一層守りを固めた。兵糧も弓矢もふんだんにあり鉄砲もあった。彼等の備えはまさに万全だった。
 家康もだ、籠城を念頭に置いて十六将に言った。
「では我等はこの城から出ずにな」
「篭もり、ですな」
「そのうえで」
「そうじゃ、戦う」
 まさにそうするというのだ。
「わかったな」
「では殿」
「弓矢と鉄砲も備えております」
「守りは万全です」
「それでは」
「そうじゃ、武田の大軍が来てもな」
 四万五千、この大軍が来てもというのだ。
「ではな」
「はい、では」
「織田殿が来られるまで」
「守りきれます」
「ですから」
「自信を以て」
 守ろうとだ、家臣達も応えてだった。
 徳川の軍勢は全軍で浜松城に篭っていた、そして武田の軍勢は遠江の東から西に入った。ここでだった。
 誰もが武田の軍勢は浜松城に向かうと思った、だが。
 彼等はそのまま東海道を西に進む、その報を聞いてだった。
 誰もが驚いた、それは家康も同じだった。服部からそう聞いて思わず立ち上がりこう言ったのだった。
「馬鹿な、ここに来ぬのか」
「はい、一兵も」
「有り得ぬ」
 それは絶対にだとだ、家康も言う。
「その様なことは」
「ですがそれでも」
「武田の軍勢はこのままか」
「三河に向かっております」
「どういうことじゃ」 
 わからないという顔でだ、家康は言った。
「武田信玄、何を考えておる」
「殿、若しや」
 鳥居がここ家康に言ってきた。
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