第十三話 向日葵の紹介その七
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「なかったですよね」
「うん、お酒はよく飲んでいたけれど」
「別になかったんですね」
「暴力を振るったり声を荒くさせることもね」
そうしたこともだったというのだ。
「なかったよ」
「本当に紳士だったんですね」
「そうだったんだ」
「じゃあ特に」
家の探偵業からだ、菊は言う。
「問題ないかと」
「人間的にはね」
「いい人だったんですか」
「ただ。人間的にはいい人でも」
「いい人でもといいますと」
「その研究がいいものとは限らないよ」
智和はこのことは真剣な面持ちで六人に話した。
「決してね」
「それってどういうことですか?」
智和の今の言葉の意味がわからずだ、向日葵は目を瞬かせてだった。そのうえで彼に対していぶかしむ声で尋ねた。
「いい人が、ですか」
「そう、例え善人でもね」
「その研究がいいこととは限らないんですか」
「神様みたいな人が沢山の人を殺す毒薬を作るとかいうことがね」
「あるんですか」
「そう、拷問器具を作ったりということもね」
そうしたこともだというんどあ。
「あるよ」
「そうなんですか」
「そう、だからね」
このことを話すのだった。
「善人といってもね」
「悪い研究をすることもですね」
「あるよ」
そうしたこともだというのだ。
「そのことは頭に入れておいてね」
「じゃあ逆の場合もありますね」
智和の今の話を聞いてだ、桜はこう智和に言った。
「悪い人が多くの人を助ける研究をすることも」
「うん、あるよ」
実際にそうだと答えた智和だった。それもあるというのだ。
「ニュートンだって人間としてはとんでもない人だったし」
「あのニュートンもですか」
「そうだったんですか」
「うん、どうもね」
ニュートンの人間性については実はかなり問題が多かったと言われている。少なくとも善人でも聖者でもなかった。
「他にもそうしたことは多いから」
「そうなのですか」
「世の中は単純じゃないからね」
これは智和でもだった。
「僕も最近やっとわかったことなんだ」
「善人でもいい研究をするとは限らない」
「悪い人でも」
「そういうものだよ。お祖父さんは人間的には紳士だったけれど」
それでもと言う彼だった、ここでもまた。
「けれどね」
「それでもですか」
「その研究は」
「素晴らしい研究だったよ、表に出ている限りはね」
「けれど裏は」
「若しかしたら」
「そう、世の中には何でも表と裏があるから」
今度言うのはこのことだった。
「僕のお祖父さんもね」
「若しかしたら」
「裏で、ですか」
「何かをしていたかも知れない」
「そうなんですね」
「どんな素晴らしい人でも完全に善人かというとね」
智和はさらに話した、人間そして世
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