夏の始まり、七夕フェイズ 魏
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も知らん。武芸や技術の上達を願うってのは知ってるんだが、いつの間にか願いをぶら下げたら叶うって曲解されているらしい」
「ふぅん。子供のような夢が多いようだけど?」
「ああ、休みの徐晃隊の中に無報酬で手伝ってくれる輩が居てな。そいつらに字が書けない子供の分も書いて貰ったんだ。あ、秋蘭と春蘭と霞は昼飯を店長と食ってたから視察ついでに手伝って貰った」
つらつらと説明していく。
言い伝えが曲がっていくのはよくあることだ。きっとこれも一つのカタチなんだろう。
そこで思い至る。
彼は私達にも書いて欲しいんだ。
「先程の物語とは全く関係が無いのね」
「んー、そうでもないんじゃないか? 天の主が二人が会える日を祝って気分が良くなって、気まぐれで願いを叶えてくれるかもしれないだろ」
言うと、華琳様がじっと秋斗さんを見つめた。
「あー、華琳が自分で叶えるからそんなのはいいってのは分かってるからさ、天の主に宣言してやればいいじゃないか」
「……それは名案ね。天に対する戦線布告。ふふ、中々面白い」
相変わらず華琳様の事を良く分かってる。二人の関係がちょっとうらやましいな、なんて考えてしまう。
それから私達は簡易の机の前に並んで、一人ずつ願いを書いていく。皆、誰にも見られないように。
五色の紙が吊るされただけの一際大きな葉竹を倒して、そこに願いの紙を括りつけて行った。
秋斗さんがそれを起こして、誰の願いも見れないようになった。一番上に括られた華琳様の紙だけは大きくて、達筆にして大きな字で書かれている願いが見えたけど。
「雛ねえさまは、何を書いたんですか?」
朔夜ちゃんに問いかけられる。言ってもいいのか、と秋斗さんに目くばせすると、
「朔夜、聞いてもいいが、口に出すと叶わない気がするからやめとけ。こういうのは様式美なのさ」
「そういう、モノでしょうか。私はもう叶っているので、書いてませんが良かったのですか?」
「いいんじゃないか? 毎年あるし、違う願いが見つかったら書けばいいし。白紙の願いの分だけ、他の人の願いが叶えられるかもな」
その時、パン……と手を鳴らす音が響いた。後に、ひんやりとした空気が地を這った。涼しくて心地いい。
地和さんが妖術を使ったらしく、幾つかの桶の中で水が凍りついていた。
「お、シロップと餡子が出来たか」
声を一つ残して、秋斗さんは店長さんの方へ行って、皆に大きな声を上げた。
「もう夏が来る。その前に、涼を味わうってのもいいと思うんだ。店長、行けるか?」
「ふふ、私を誰だと思っているのですか。くっきんぐふぁいたぁを舐めて貰っては困りますね」
「上々だ、なら……やってくれ」
桶の氷を取り出した店長さんは大きな包丁を取り出し……み
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