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銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
歓迎会
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「お断りだな。店主――会計を……」
 立ち上がったアレスの肩を、禿頭の男が握った。

 止めようとして、しかしその肩についた筋肉に気付いたようだ。
 驚きを浮かべた男は片手でアレスを止める事は叶わず、アレスは制止などなかったように店主を呼んだ。
 店主も面倒事は御免だとばかりに、急ぎ会計を手にする。
 しかし、そんな店主が他の男に遮られる様子に、ウォーカーが苛立ったように禿頭の男を睨みあげた。

「こちらも騒がしくして悪かったが。その態度はどうかと思うがね」
「態度が悪いのは元々でな。何せお前らと違って、こっちは毎日命がけで……」
 叫んだ男の声は、しかし、扉を開いた音にかき消された。
 集中する視線が、苛立ったような男の顔を捉える。

 決して大柄ではない。
 しかし、服の上からでも透けて見える筋肉が一般人ではない事を告げていた。
「そ、曹長……」

 ばつが悪そうに呟いた言葉を聞いて、入ってきた男が眉をひそめた。
「何してる、伍長。人が残って残業してるってのに随分とご機嫌だな……え」
 そこで曹長と呼ばれた男の顔が変わった。

 目を開けば、立ちすくむ禿頭の男を無視して、その脇を駆け抜けた。
 周囲の驚きなど知らぬように、男はアレスの前に来れば、勢いよく敬礼。
 直立不動のままで、アレスに頭を下げた。
「これはマクワイルド中尉。こんなところでお目にかかれるとは出来るとは思いもしませんでした!」

 唐突な礼に、驚いたのはアレスも同様であった。
 眉根が戸惑ったように動いて、少し考える。
 結局わからなかったようで、いまだに敬礼を続ける男に手を振りながら問うた。
「ああ。ええと、君は誰だ?」

「は。自分はリュナス曹長であります。カプチェランカでは第五中隊第三小隊の第一分隊長を任されておりました。先日の戦闘では中尉の部隊に危機を救われました一人です」
 カプチェランカの名前に、周囲が騒然となった。
 前線部隊の中でもカプチェランカの名前は広く伝わっている。

 特に最近に起こった戦闘は、同盟軍帝国軍双方とも大きな死者を出しており、カプチェランカ帰りというだけで尊敬の視線を集めたのだった。現に目の前の曹長も、この十月でカプチェランカから帰ってきており、周囲からの信頼は非常に厚い。
 まさかという視線と、そんな人物に絡んだ事実から騒然とした周囲が、逃げるように視線をそらした。

 そんな微妙な空気を感じたのだろう。
 リュナスは周囲を見渡して、そして先の騒動を思い出す。
「まさか。お前ら……この方達に絡んでいたというわけではないな?」
 否定の言葉はない。

 それを肯定と受け取って、リュナスの表情に血管が浮き出た。
 怒りだ。
「きっさまら」
「怒るな曹長。騒がしく
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